2015年3月5日、シュトゥットガルト市立美術館が10歳の誕生日を迎えました。誕生日を多くの市民と盛大に祝うため、3月7、8日の2日間にわたり、市民祭りが開催されました。この日のメインイベントは、巨大バースデーケーキの入刀式や、現代美術アーティストのディーター·ロート特別展の無料開放。午前中に行われたケーキの入刀式には参加できませんでしたが、新聞で掲載された写真を見ると、ケーキは大きなキューブ形で、美術館の建物と同じユニークなフォルムをしていました。
夜の華やかなエントランス
当美術館は2005年、現在ベルリンに建築事務所を構えるシュトゥットガルト出身の建築家、ハッシャー氏とイェーレ氏によって設計されました。市民からはケーニッヒ通りに建つ「ガラスキューブ(gläserner Würfel)」という呼び名で親しまれており、コンクリートの箱型の展示空間が、外側のガラスにすっぽりと包み込まれる形になっています。夜の照明は特に印象的で、外からは見えない内側の石壁が浮かび上がり、昼間とは違う表情を見せます。
イベントの当日、私と友人は夕方に美術館に到着。すでに大勢の訪問者で賑わっていました。まずは、ディーター·ロートの特別展へ。展示は3フロアを使って行われていました。
ディーター・ロート展の展示風景
ディーター·ロートはドイツ系スイス人。日本ではあまり知られていないようですが、欧米では、文章作品の内容ではなく、文字や言葉の形や響きで表現する具体詩(Konkrete Poesie)の代表的アーティストと呼ばれるほど有名です。展示会では、ディーター·ロートが作った本や絵、またインスタレーションが鑑賞できました。展示会のポスターなどに使われていた巨大ソーセージは彼の代表作品の1つで、その名も「文学ソーセージ」。それぞれの「ソーセージ」には、丸一冊の本または雑誌をミンチにして肉に見立て、ソーセージの表皮に詰めてあります。肉に代わる中身以外は、すべて伝統的なソーセージのレシピを用いたそうです。ソーセージのラベルには、本や雑誌のタイトルと署名、日付けが記されています。そのほかにも、ユーモアたっぷりの言葉遊びや詩的実験、読むことによって理解するというよりも、知覚に訴えるようなアートオブジェがたくさん展示されていました。さらに、彼が即興で弾いたピアノ演奏のレコードもありました。聴いてみるとリズムがとても斬新で、詩的実験の作品と実にシンクロしていると感じました。
鑑賞後にロビーに下りると、地元産のケスラーゼクトが振る舞われており、それと同時にジャズのライブ演奏も始まりました。訪問者の中には踊り出す人もいて、ロビーはたちまち楽しいダンスフロアに早変わり。五感が満足した一日でした。
www.kunstmuseum-stuttgart.de
中国生まれの日本国籍。東北芸術工科大学卒業後、シュトゥットガルト造形美術大学でアート写真の知識を深める。その後、台北、北海道、海南島と、渡り鳥のように北と南の島々を転々としながら写真を撮り続ける。
www.kakueinan.wordpress.com