先日、シュトゥットガルトに本社を置くダイムラー社の美術コレクションの講演及び展示会への招待を受け、足を運んできました。今年の展示は、ドイツ全国でベルリンとシュトゥットガルトの2カ所。ベルリンにある展示はレディ・メイドを中心に構成。これはフランスの美術家マルセル・デュシャンによって生み出された、いわゆる既製品アートのことです。そしてシュトゥットガルトにある今回の展示「中国コンテンポラリーアート展、1990年から今日まで」は、主に中国現代アートに重点を置いた作品が集められていました。
展示会場はメーリンゲン地区のダイムラー社敷地内。厳重なセキュリティーをくぐり、とある建物の中へと案内されました。会場に入ったとたん、ランドアートのパイオニア的アーティスト、ウォルター・デ・マリアの作品が堂々とロビーのど真ん中にたたずんでいます。美術史の本などでしか見たことのない彼の作品のオリジナルを、まさかここで観ることができるとは実に驚きました。
講演会の会場。壁一面に見事なウォールペインティングアート
続いて、2階に上がり、大きなホールに入ります。ここで、自らアーティストであり、中国アートのスペシャリストでもあるアンドレアス・シュミットさんによる講演が行われました。90分間の講演で、シュミットさんは中国の近代史と美術史を簡単に紹介。その後、同じ建物内にある展示を一緒に見て回り、ガイドもしてくれました。絵画や写真など、壁に展示できる作品はもちろんのこと、ビデオやインスタレーションアートもありました。展示は廊下から、会議室、食堂まで、日々多くの人の目に触れる場所に並べられています。
実はこの最新アートへの取り組みはダイムラー社の社員教育の一環として考えられていて、美意識、デザイン、それにライフスタイルやトレンドなどに対する感性を育てることを目的としているそうです。このような一流のアートに日常の中で触れられる環境は、一流企業ならではだと思いました。
ダイムラー・美術コレクションは、シュトゥットガルト出身で、20世紀ドイツを代表する画家ヴィリー・バウマイスターの1枚の絵画「休息と運動Ⅱ(青)」の購入をきっかけに、1977年にスタートしました。2000 年以降、抽象的・コンセプチュアル・ミニマルアートという方向へフォーカスを絞り、現在は700人以上のアーティストによる2600点以上の作品を誇っています。コレクションは、インターナショナルで最新のアートに常に目を向け、特に若手アーティストや南アフリカ、インド、南アメリカ、中国などのアーティストの支援に力を入れているようです。
中国の簡単な近代史と美術史についての講演の様子
「中国コンテンポラリーアート展、1990年から今日まで」は9月24日まで見学できます。事前申し込みが必要。詳しい情報はHPでどうぞ。
ダイムラー・美術コレクション: www.art.daimler.com
中国生まれの日本国籍。東北芸術工科大学卒業後、シュトゥットガルト造形美術大学でアート写真の知識を深める。その後、台北、北海道、海南島と、渡り鳥のように北と南の島々を転々としながら写真を撮り続ける。
www.kakueinan.wordpress.com