ジャパンダイジェスト

コルピング美術学校、40周年記念展

シュトゥットガルト・コルピング美術学校は、日本で言う美術大学などの予備校に当たります。筆者自身もドイツで美大受験を経験しましたが、ドイツの芸大・美大の場合は作品ポートフォリオの提出と適正試験が設けられているのが一般的です。自分のポートフォリオも、実はこのコルピング美術学校でいろいろな技術を学び、作品を集めて作りました。なので、自分の母校でもあるのです。この学校は1977年から78年にかけて創立され、これまでに延べ2000人の生徒を世に送り出しました。

今回はシュトゥットガルト市庁舎4階で、フロア全体を使用した展示を行いました。ファインアート、グラフィックデザイン、ファッションデザイン、テキスタイルデザイン、トランスポートデザイン、工業デザイン、ステージデザイン、建築など13の異なる分野を目指した生徒たちの今日の活躍ぶりを紹介したものです。幸いにも、私も出展者に選ばれ、ファインアートの先輩の1人として写真作品とインタビューを展示しています。学校にいた当時はどの専攻を目指していてもほぼ同じカリキュラムをこなしましたが、その後みんなそれぞれ実に多彩なキャリアを歩んでいることにびっくりしました。コルピング美術学校を出て、トランスポートデザイン専攻に入ったガブリエルさんはフェラーリやポルシェなどの世界一流の自動車メーカーでインターンを経て、今は卒業設計に取り掛かっているそうです。彼の手がけたデザインが実際にメルセデスの次世代の設計に運用されていくそうで、わくわくしますね。

卒業生の作品
グラフィックデザイン専攻に進んだ卒業生の作品

次世代のメルセデスの内装デザイン案
次世代のメルセデスの内装デザイン案

私の作品3点
私の作品3点

絵画の作品
絵画の作品

美術の分野だけではなく、コルピング学校(Kolping-Bildungswerk)はここシュトゥットガルトの街を歩くと、たびたび目にする名前です。これは実は牧師で社会改革者・教育者のアドルフ・コルピング(Adolph Kolping)氏の名前にちなんだ教育施設。コルピング氏は19世紀半ばに最初の職人連合をケルンで設立しました。彼は、貧困層や失業者などの社会的弱者にも愛と信仰、公的精神、連帯などの価値を体験する機会を与えるべきとして、連帯を強めるためのコミュニティーをつくったのです。職業訓練と資格の取得によって、人々が自分の頭と体で幸せな生活を送ることが彼にとっての重要なテーマでした。

コルピング美術学校は受験目的だけでなく、実は社会人でも趣味として参加できる夜間コースや、夏休み期間のコースなど、気軽にデッサンや造形美術などが体験できます。

コルピング美術学校: www.kolping-kunstschule.de

郭 映南(かく えいなん)
中国生まれの日本国籍。東北芸術工科大学卒業後、シュトゥットガルト造形美術大学でアート写真の知識を深める。その後、台北、北海道、海南島と、渡り鳥のように北と南の島々を転々としながら写真を撮り続ける。
www.kakueinan.wordpress.com
 
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