ビタミンって何?
私たちに必要な栄養素は、1)糖質(炭水化物)、2)タンパク質、3)脂質の3大栄養素と、4)ビタミン、5)ミネラル類の微量栄養素です。ビタミンは全部で13種類あり、体の代謝機能を助ける潤滑油として働いています。しかし、私たちは体内でビタミンを作ることができません。そのため、すべてのビタミンを食事から摂ることになります。ビタミン(Vitamin)は、生命・活力という意味の「Vital」という言葉に由来します。
ビタミンの働きは?
ビタミンは、体の中で起こる化学反応に欠かせない酵素の働きを助けています。そのほか、ビタミンA は視覚機能、D はカルシウムの吸収・沈着、E は細胞の保護作用、K は血液凝固、B12や葉酸は貧血防止、C は血管壁の止血や免疫に関わっています。
水に溶けるビタミン、溶けないビタミン
水に溶ける水溶性ビタミン(ビタミンB群とビタミンC)と、水に溶けない脂溶性ビタミン(ビタミンA、D、E、K)に大別されます。
表1 水溶性と脂溶性ビタミンの特徴 | |
水溶性ビタミン | • 水に溶けやすい(過度な水洗いでも失われる) • 煮汁にもビタミンが含まれている • ビタミンC は加熱に弱い • 余分なビタミンは体外に排泄される • 過剰症の心配はない |
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脂溶性ビタミン | • 油に溶けやすい • 加熱に対し比較的安定 • 体内に貯蔵され、排泄されにくい • 余分なビタミンは過剰症を引き起こすことがある |
図1 ビタミンの種類
(「日本ビタミン学会」の図を改変引用)
ビタミンの過剰症とは?
脂溶性ビタミンの摂取で問題となります。長期間ビタミンA を過剰摂取すると、皮膚の荒れや乾燥、髪の毛の痛みなどを生じます。特に妊婦の場合、胎児の奇形の原因になるので注意が必要です。ビタミンD の過剰症では、高カルシウム血症や組織の石灰化が促され、抗凝固薬を服用している人が多量のビタミンE を摂取すると、脳出血などの出血性疾患の危険性が高まることが知られています。
現代のビタミン欠乏症は?
肥満やメタボリック症候群が問題となっている昨今、栄養失調を伴ったビタミン欠乏症は少なくなりました。しかし、食生活の偏りからビタミン不足をきたすことがあります。食品の好みに偏りがあったり、お菓子やスナック類、レトルト食品のみで食事を済ませたり、アルコールを飲む際に食事がおろそかになる人は注意が必要です。もちろん、極端なダイエット、野菜・果物のない食事、逆に徹底した菜食主義も問題です。
主なビタミン
●ビタミンA
欠乏すると夜盲症になります。緑黄色野菜、人参、うなぎ、レバーなどに多く含まれています。
●ビタミンB群
B1の不足で脚気(かっけ)、B2不足では口角炎や舌炎、B6不足は抹消神経炎、B12や葉酸の不足では大球性貧血を生じます。B1は豚肉に、B2は海苔・牛乳・卵に、葉酸はほうれんそうに多く含まれます。レバー(肝臓)はB2、B6、B12などを豊富に含みます。
●ビタミンC
欠乏すると壊血(かいけつ)病を起こします。ビタミンC は風邪などのウィルス疾患に対する免疫力を高めたり、抗酸化作用によりビタミンE と共に動脈硬化の予防に有効です。果物、お茶、ジャガイモに多く含まれます。
●ビタミンD
不足すると骨粗しょう症やくる病の原因となります。肝油、魚類に多く含まれます。
●ビタミンE
ビタミンE の不足で脂肪の吸収障害による神経症状を来すことがあります。ビタミンE には抗酸化作用があります。アーモンドやピーナッツなどのナッツ類、植物油に含まれています。
●ビタミンK
ビタミンK は血液凝固能に関係しています。通常の食生活を送っていれば、欠乏症はまず起こりませんが、新生児はビタミンK が不足しやすいのでビタミンK の注射をします。納豆はビタミンK を豊富に含んでいますが、ドイツではなかなか入手できませんね。
ドイツ生活のビタミン学
●ジャガイモのビタミンC
ジャガイモにはビタミンC が豊富に含まれています(100g当たり23mg)。ジャガイモに含まれるビタミンC はデンプンに保護されているため、加熱による崩壊が少ないと言われています。
●ザウアークラウトとビタミンC
ドイツの名物料理、ザウアークラウトはビタミンC とAを豊富に含むキャベツの漬物です。昔は航海中のビタミンC の欠乏から生じる壊血(かいけつ)病の予防食として利用されていたこともあるそうです。
●ドイツパンとビタミン
ドイツのライ麦パン(Roggenbrot)にはビタミンB1が普通の食パンの約2.5倍、B2は2倍近くも含まれています。また、ナッツ類の入ったパン(Nussbrot)はビタミンE が豊富です。ビタミンではありませんが、茶色っぽいパン (Dreikornbrot、Vierkornbrot Mehrkornbrot など)には食物線維が豊富に含まれており、便通の改善に役立ちます。
●豚肉とビタミンB1
ドイツ料理に欠かせない豚肉には、ほかの肉類に比べて遥かに多くのビタミンB1が含まれています。豚肉100g(ビタミンB1が0.7-1.2 mg)で1日の所要量(1.1-1.2 mg/日)の大方を満たします。
●シリアル食品とビタミン
ドイツの朝食で多用されるミューズリー(Müsli)は穀物・ドライフルーツ・ナッツ類などを混ぜたシリアル食品です。市販のものにはビタミンやミネラル類を強化した製品が多くあります。
●太陽光とビタミンD で骨を強化
ビタミンK は血液凝固能に関係しています。通常の食生活を送っていれば、欠乏症はまず起こりませんが、新生児はビタミンK が不足しやすいのでビタミンK の注射をします。納豆はビタミンK を豊富に含んでいますが、ドイツではなかなか入手できませんね。
●愛酒家のためのビタミン学
当地の美味しいワインやビールも連日量が過ぎると、バランスの取れた栄養摂取がおろそかになってしまうことも。さらに、お酒を飲むとアルコール代謝のためビタミンB1やB2が余計に消費されます。飲酒時にも食事の栄養配分に留意しましょう。
表2 ドイツの食材とビタミンの例 | ||||||
食品 | ビタミン | |||||
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A | B群 | C | D | E | K | |
緑黄色野菜 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ||
バター | ◯ | |||||
チーズ | ◯ | ◯ | ||||
牛乳 | ◯ | ◯ | ||||
卵 | ◯ | ◯ | ◯ | |||
豚肉 | ◯ | |||||
ライ麦パン | ◯ | |||||
酵母 | ◯ | |||||
レバー | ◯ | ◯ | ||||
ジャガイモ | ◯ | |||||
ザウアークラウト | ◯ | |||||
果物 | ◯ | |||||
きのこ | ◯ | |||||
ナッツ類 | ◯ |
ビタミン・サプリメントの効能は?
通常、1日に必要なビタミン量は食事から摂ることが可能です。激しい運動をするスポーツ選手、食事が十分に摂れていない、あるいは脂肪吸収に障害がある、消化器の病気がある、という人にはビタミン補充が有用になることも。ただし、脂溶性ビタミンの長期多量摂取には注意が必要です。
自宅で作るビタミンのジュース
家庭のジューサー(Entsafter)で作るジュースは、野菜類にはビタミンA が、果汁にはビタミンC がそのまま含まれています。ジューサーで作るジュースは、野菜や果物をそのまま砕くので、ビタミン類とともに不溶性の繊維成分もそのまま含まれます。加熱によるスチーム・ジューサー(Dampfentsafter)で作ると、熱処理で殺菌されるため長期保存には適しますが、ビタミン類は熱で壊れてしまうこともあります。
ドイツでの生活とビタミン
ビタミンの1日の必要量はごく少量です。毎日の規則正しい食事、ビタミンを含めた栄養素のバランスの取れた献立を心掛けましょう。