ジャパンダイジェスト

ドイツでの病気に備える基礎知識

ドイツに来たばかりで言葉の問題もあるため、病気になった時が心配です。病院のかかり方について教えてください。

Point
● 受診する時は必ず電話予約をします
● 診療を受ける際は疾病保険カードを忘れずに
● 薬や予防注射ワクチンは薬局で購入します
● 通常の外来は開業医院で、休日や夜間の急患は病院の救急外来へ

病気になったら

ドイツの外来診療は開業医院(Praxis)が担っています。診察を希望する時は、まず電話で予約をしましょう。受診する診療科にかかわらず、予約がなければ、待っていても早く診てもらえるということは、ほぼありません。初めての診察や久しぶりの受診の際は、受付で日本の健康保険証に当たる疾病保険カード(Versicherungskarte)を提示します。 疾病保険には公的強制保険(AOK、DAKなど)と民間保険(Inter、Mannheimerなど)があります。民間保険は通称「プリバート(Privat)」と呼ばれます。 

診察時、患者の位置は医師の横ではなく、多くの場合、机を挟んで対面に座ります。診察台には、特に指示がない限りは靴を履いたまま横たわって大丈夫です。

診療費はドイツの診療報酬基準(GOÄ)に従って算定されます。民間保険の場合、後日送られてくる請求書の内容をチェックした上で銀行振込をします。請求書と銀行振込証を保険会社に送ると、規定に従った金額が本人に払い戻されます。

表1. 病気になったらどこに連絡する?
いずれの場合も疾病保険カードを忘れずに
初めてのクリニック受診
これから受診する医院に電話予約
(民間保険のみを扱っている医院もあります)
専門科の受診や入院治療が必要な場合
かかりつけの医師が専門医や病院へ紹介してくれます
夜間・休日などの救急の場合
病院(Krankenhaus)の救急外来へ
救急車(112番)で

表2. 知っていて役立つ医用単語(症状)
症状ドイツ語読み方
発熱Fieberフィーベル、フィーバー
腹痛Bauchschmerzバウフシュメルツ
頭痛Kopfschmerzコップフシュメルツ
Kopfwehコップフヴェー
歯痛Zahnschmerzツァーンシュメルツ
下痢Durchfallドゥルヒファル
吐き気Übelkeitユーベルカイト
おう吐Erbrechenエルブレッヒェン
Hustenフステン
のどの痛みHalsschmerzハルスシュメルツ
じんま疹Urtikariaウルティカリア

薬は薬局(Apotheke)から

薬が必要な場合、医師からの処方せんを持って薬局(Apotheke)へ行き、購入します。薬局は赤い文字の大きな「A」が目印です。薬の在庫がない場合には取り寄せてくれたり、必要に応じて自宅に届けてくれたりします。薬は日本のような薬袋ではなく、薬箱もしくは薬瓶ごと渡されます。子ども用の抗菌薬(抗生物質)のドライシロップのように、自宅で水を足し、濃度を調整してから服用するタイプのものもあります。薬箱内の説明文はドイツ語のみですので、事前に医師から具体的な服用の仕方や注意点を聞いておくと良いでしょう。公的保険の場合は決められた額(5~10ユーロ)のみを支払います。民間保険では、薬局での薬購入時に現金かECカードで代金を負担します。薬局から返される代金印字済みの処方せんを加入先の民間保険会社に送ると、規定に従った金額が払い戻されます。

表3. 知っていて役立つ医用単語(診察)
症状ドイツ語読み方
医師Arzt(男性)Ärztin(女性)アルツト、エルツティン
疾病保険Krankenkasseクランケンシャイン
Krankenversicherungクランケンフェアズィヒァルング
保険証Krankenscheinクランケンシャイン
診察時間Sprechstundeシュプレッヒェシュトゥンデ
処方箋Rezeptレツェプト
Medikamentメディカメント
往診Hausbesuchハウスベズーフ
診断Diagnoseディアクノーゼ
血液Blutブルート
尿Urinウリーン

予防接種について

ワクチン製剤は薬局から
予防接種を受けるには、まず医師が書いた処方せんを持って薬局でワクチンを購入、そのワクチンを医師に接種してもらいます。

子どもの予防接種
予防接種(Impfung)の種類とスケジュールは、ドイツと日本では異なります。日本で勧奨されるワクチン接種を完了していても、ドイツでは足りないと言われることも。判断に困る時は、どの優先順位で予防接種を行うのが望ましいか、医師から助言を受けると良いでしょう。相談の際は、必ず日本の母子手帳を持参してください。

ダニ脳炎の予防注射
夏が近付くと話題になるマダ二(Zecke)によるダニ脳炎(FSME、初夏脳炎)。日本脳炎と似た中枢神経系を侵すウィルス疾患で、南ドイツ、スイス、オーストリア、ポーランド、チェコ地域の森林地帯で感染例が報告されています。通常の観光旅行ではあまり問題になりませんが、キャンプなど、森林地帯に行く際は要注意です。

破傷風の予防注射
破傷風(Tetanus)は、接種後10年を経過すると抗体価が下がり、予防効果が乏しくなります。屋外スポーツでのけがや自転車での転倒など、感染の機会はいたるところにあります。

救急外来へ

病院の救急外来
夜間や休日の急患は病院(Krankenhaus)や大学病院(Uni-Klinik)の救急外来を訪れます。前述の疾病保険カードと身分証明書(パスポートなど)の持参を忘れないようにしてください。診察後、特に入院の必要がない場合には、応急の治療を受けて自宅に戻ります。都市によっては開業医師が交代で担当している夜間・休日の救急外来(Notfallpraxis)も利用できます。

救急車を呼ぶ
緊急を要する時は電話番号「112」で救急車を呼びます。ドイツの救急車は、① 患者搬送を目的とするクランケンワーゲン(Krankenwagen)、② 日本の救急車に近いレットゥングスワーゲン(Rettungswagen)、③ 医師が同乗しているノートアルツトワーゲン(Notarztwagen)の3種類があります。救急車を呼ぶ時は、自分の住所(居所)、電話番号、簡単な症状もしくは容体を記したメモを用意してから電話すると、慌てずに済むでしょう。

休日に薬が必要な場合
休日や夜間に急に薬が必要な時は、最寄りの薬局に行くとその日の当番の薬局が分かるようになっています。当番薬局はインターネットでも検索できます。

入院について

外来診療を開業医院が担当するのに対し、病院は主に入院患者の治療を行います。したがって、病院が外来患者でごった返しているという風景はみられません。一般的にドイツの病院での入院期間は日本と比べて短く、虫垂炎術後も3~4日で退院の話が出てきます。公的保険の場合には大部屋、民間保険の場合には1~2人個室の使用となります。入院中は日本ほど至れり尽せりとはいかないので、自分でできることは自分で、という心構えも多少は必要です。入院食は当然ドイツ食。公的保険での入院費用は1日10ユーロです。

疾病保険での留意点

日本の健康保険とドイツの疾病保険は、目的こそ同じですが、運用面の仕組みは異なります。例えば、保険項目だからといって、すべて保険でカバーされるとは限りません。公的保険を用いての検査項目や薬の処方には制限があります。また、民間保険でも、契約内容によっては渡独前から罹患していた慢性疾患の継続治療に対して制限される場合もあります。不確かな点は加入している疾病保険会社に一度確認してみると良いでしょう。

表4. 診察の時に留意したいこと
携帯電話はオフにしましょう
予約時間に遅れる時は連絡を
処方された薬の飲み方は確かですか
日本からの常用薬は薬剤名と用量を必ずメモにして
高額の検査は保険でカバーされるか保険会社に確認を


図1. ドイツの外来診療のしくみ
ドイツの外来診療のしくみ

 
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馬場恒春 内科医師、医学博士、元福島医大助教授。 ザビーネ夫人がノイゲバウア馬場内科クリニックを開設 (Oststraße 51, Tel. 0211-383756)、著者は同分院 (Prinzenallee 19) で診療。

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