ジャパンダイジェスト

子どもの片頭痛

中学生の子どもがいます。ときどき急に頭が痛くなり、少し眠ると良くなると言います。病院では片頭痛ではないかと言われましたが、子どもにも片頭痛はあるのでしょうか。教えてください。

Point

  • 急に始まり、短時間で治る。
  • 腹部の症状を訴えることも。
  • 平日の朝や学校の後に起こりやすい。
  • 睡眠で改善する。
  • 家族歴との関係性が強い。
  • 鎮痛剤は効果あり。

片頭痛(Migräne)とは

頭の片側(両側のことも)にズキンズキンと脈打つような激しい痛み(拍動性の頭痛)がみられます。また、吐き気やおう吐を伴い、光や音に過敏になります。頭痛が生じる前に予感がしたり、視界に光が見えるような前兆(Aura)がみられるタイプと、前兆を伴わないタイプがあります。発症中は、日常の生活が著しく妨げられることがあります。

子どもの片頭痛

頭痛は大人の病気というイメージがありますが、子どもの片頭痛も稀ではありません。小児の慢性反復性頭痛の57%は片頭痛によるものとの集計もあります(2005年『日本臨床』より)。大人の片頭痛も、子どもの頃の発症が原因であることが少なくありません。早いと、幼稚園頃から症状がみられます。

片頭痛の誘因

1. 疲れや寝不足による影響。夜更かしや朝寝坊は片頭痛の誘因になります。2. 超過睡眠。寝過ぎも血管を拡張させ、片頭痛の誘因に。3. ストレスが加わったとき、またはストレスから急に解放されたとき、などが挙げられますので、十分に留意しましょう。

子どもの片頭痛の特徴

● 急な発症
特に10歳以下の子どもに、急性的な頭痛が起こることがあります。つい先程まで元気に遊んでいたと思ったら、急に顔面蒼白となって元気がなくなり、しばらくすると何事もなかったかのように再び遊び出したりします。

図1 子どもの片頭痛

● 睡眠で改善
片頭痛の発作が生じると眠くなり、また睡眠によって痛みが治まることがあります。

● 腹痛がみられることも
子どもの片頭痛は、腹部の痛みを伴なうことがあります。腹部の痛みの方が強い片頭痛を、腹部片頭痛(Bauch-Migräne)と呼びます。

● 朝に発症
10歳以下の子どもでは、登校前の朝に起こりやすく、週末や学校が休みの期間は発症が減少します。また、学校の帰りや帰宅後など、ストレスから解放されると起こることがあります。

● 前兆としての視覚異常
子どもの片頭痛の約20%に「前兆」がみられます。前兆として最も多いのが、「目がかすむ」「光が見える」「物が歪んで見える」「大きさが変わって見える」などの視覚異常です。

● 頭痛が不明瞭なこともある
子どもの片頭痛は、大人のように痛みの強弱や拍動感がはっきりしません。漠然と、額の中央当たりに痛みがあると訴えたりします。

表1 典型的な片頭痛発作の経過

予兆(警告) 1〜2日前から普段とは違う様子がみられる。
前兆(Aura) 症状が出る前に20〜30分視覚異常が続く。
※子どもでは見られないことも多い。
発症 頭痛や腹痛が起こる。普通の日常活動は困難となり、眠るか暗い部屋で休むことを欲する。
発作後の症状 睡眠後に徐々に改善。おう吐で改善することも。
回復 完全に元の状態に戻るには、1〜2日掛かることもある。
※ただし、子どもは回復が驚くほど速い。

● 家族歴との関係
子どもの片頭痛の7〜8割に、片頭痛の家族歴があります。男児も女児も、母親からの遺伝が濃厚とされています(2010年『日本頭痛学会誌』より)。

片頭痛のある子どもの割合

日本人の大人の片頭痛患者の半数以上は20歳以前の発症で、3分の1は15歳以下の発症と言われています。世界の疫学調査をまとめた論文によると、片頭痛の頻度は3〜7歳で1.2〜3.2%、7〜11歳で4〜11%、15歳で8〜23%です(2009年医学誌『Neurol Clin』より)。学童の10人に1人は片頭痛の経験を持つという数値もあります(英国の片頭痛患者支援組織Migrane Action Association調べ)

図2 子どもの頭痛の内訳

発症の年齢と男女比

子どもの片頭痛の発症は、どの年齢でもみられますが、発症のピークは5歳前後と10〜12歳です。幼少時は男児の比率が高く、12歳を過ぎる辺りから女児の発症比率が高くなります。

子どもの片頭痛の予後

1983年に発表されたフィンランドの追跡調査によると、7歳のときにみられた片頭痛の場合、子どもが14歳になる頃には約6割に症状の改善がみられるという結果が出ています(1983年の医学誌『Headache』より)。また、子どもの片頭痛の約半数は、大人になっても継続すると言われています。

表2 子どもにみられるその他の頭痛

病気 発症の誘因
急性上気道炎 風邪に伴なって発症
緊張型頭痛 ストレスや肩こりと関係する
てんかんに関連した頭痛 てんかん発作時に起こる
心理的要因による頭痛 片頭痛や緊張型頭痛に関係する
副鼻腔炎・脳腫瘍など 頭蓋内の病変に伴なって発症

予防に役立つこと

1. 日頃から規則正しい生活を心掛ける。2.夜更かしを避け、十分な睡眠を取る。3.早起きして朝食をきちんと取る。4.過大な心身へのストレスを避ける。このようなことに留意すると、発症を減らすことができます。

治療法

子どもの片頭痛には、イブプロフェン、アセトアミノフェン(パラセタモール®)など、鎮痛解熱薬の服用が効果的です。大人の片頭痛に用いられるトリプタン製剤の効能は、報告によって必ずしも一様ではなく、現在のところ小児への投与は避けるべきとされています。

学校生活での注意

登校前に起きやすく、学校でも保健室で少し休めば良くなることから、周囲からは「気持ちの問題」などと軽く考えられてしまうことがあります。また、片頭痛の子どもには起立性調節障害(OD)も多く、朝礼などでの長時間の起立不動の姿勢は良くありません。

子どもへの対処法

大人の片頭痛の何割かは、小児期・青少年期の発症が原因とされています。子どもの片頭痛は大人のものとは特徴が異なるため、気付かれずに見過ごされてしまうこともあります。まずは子どもの訴えをよく聞き、病気を疑ってみることから始めましょう。子どもの片頭痛は小児科医に相談を。

 
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馬場恒春 内科医師、医学博士、元福島医大助教授。 ザビーネ夫人がノイゲバウア馬場内科クリニックを開設 (Oststraße 51, Tel. 0211-383756)、著者は同分院 (Prinzenallee 19) で診療。

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