Hanacell

子供の予防接種、 ドイツでは?

4月に日本から転勤してきました。日本での予防接種が途中の子供が二人います。続きの予防接種をドイツで受けることができるでしょうか?

Point

  • ドイツの予防接種は世界基準のWHOの推奨にのっとっています。
  • 日本脳炎とBCGは行われていません。
  • おたふく風邪の単独ワクチンはありません。
  • 子供の予防接種の日本での記録は母子健康手帳で分かります。
  • 予防接種のスケジュールは医療機関と相談しましょう。

ドイツの小児の予防接種

● 日本との接種項目の違い

ドイツのSTIKO(予防接種委員会)が推奨する小児の接種項目も、日本の厚労省が定めた定期接種項目も、14種と数は同じです。違いは、ドイツでは日本脳炎とBCG(結核の予防接種)が含まれておらず、代わりに日本では任意接種であるB型肝炎(10月より日本でも定期接種予定)、おたふく風邪、ロタウィルスが含まれています。

予防接種に関するドイツ単語

● 混合接種製剤が多いドイツ

ドイツでは、不活性ワクチン(Totimpfstoff)の6種混合ワクチン(破傷風、ジフテリア、百日咳、ヒブ菌、ポリオ、B型肝炎)を2歳前に4回接種します。生ワクチン(Lebendimpfstoff)も、3種混合生ワクチン(麻しん、風疹、おたふく風邪を含むPriorix®など)や4種混合生ワクチン(3種混合+水痘ワクチンを含むPriorix Tetra®など)が用いられます。その結果、幼児への注射回数が日本より少なくなっています。

● おたふく風邪のワクチンがない?

混合ワクチン製剤が主体となっているため、ドイツではおたふく風邪単独のワクチンは入手が難しく、代わりにMMR(麻しん、おたふく風邪、風疹)ワクチンの接種が行われます。

● 2歳までに大半の予防接種を終了

ドイツの予防接種スケジュールでは、2歳までにほとんどのワクチン接種が完了するようになっています。早い年齢で免疫を獲得し、地域全体として感染症を予防するのに役立っています。そのため、日本からドイツに来たばかりの子供が小児科を受診すると、ドイツの基準にのっとってあれも未接種これも未接種と指摘され、幼稚園や小学校の入園のために接種を勧められることがあります。

ドイツの小児予防接種(2歳未満)

ドイツでは含まれない予防接種

●日本脳炎

ドイツには、日本脳炎を媒介する蚊(Mücke)が生息していないため、日本脳炎の予防接種は行われていません。最近、オーストリアの製薬会社が製造する日本脳炎ワクチン(Ixiaro®)をドイツでも接種できるようになりました。日本脳炎は、日本のみならず東南アジア一帯において感染の危険があるため、アジアでの長期滞在を予定している子供は接種を考慮した方が良いかもしれません。

●BCGの接種

結核の予防接種であるBCGは、ドイツでは1975年以降行われていません。また、BCGワクチンの入手は実質的に困難です。その背景には、結核患者が多くないこと、そしてBCGの効果が疑問視されてきたことがあります。近年の研究で、感染リスクの高い子供にはBCG接種の予防効果があるという報告が多く出ており、WHO(世界保健機構)も欧州全体を結核の感染リスクの高い地域として警告を出しています。2012年にはドイツで約4200人の新規発症の結核患者が報告されています(2014年のロベルト・コッホ研究所の報告)。

欧州の人口10万人当たりの結核の罹患率

成人になってからの追加接種

● 破傷風は10年に一度

幼少時にDPT(ジフテリア、百日咳、破傷風)の3種混合を受けて以来、破傷風についてあまり気にしていない人も多いと思います。しかし、花壇での土いじり、サッカーでの怪我、自転車の転倒など、大人になってからも感染のリスクがある破傷風に対し、免疫を維持するには10年に一度の追加接種が必要です。

●B型肝炎の予防接種

かつてA型肝炎、B型肝炎の予防接種を受けた人も、時間の経過とともに抗体価(感染予防に必要な免疫のレベル)が下がってきます。A型肝炎ワクチンの予防効果は10年以上(から生涯にわたって)、B型肝炎ワクチンは3年以上と考えられています。B型肝炎はワクチンの追加接種により予防効果を維持できます。

初夏脳炎の予防接種

毎年、夏が近づくと話題になるのがマダニ(Zecke)に媒介されるウイルス感染症の初夏脳炎(略してFMSE)です。日本脳炎と似た症状や後遺症を引きおこします。ウイルスを保有している可能性のあるマダニが生息しているのは南ドイツ、スイス、オーストリア、さらにポーランドなどの東欧・中欧地域です。これらの地域での子供のキャンプ活動や森林内でのハイキングを予定する場合には、十分なゆとりをもって予防接種を検討しましょう。

 

留意点

● 母子健康手帳は大切な情報源

予防接種の指針が改定されることがあるため、子供の生年によって接種項目や回数が異なっている現状があります。日本の母子手帳には、予防接種の詳しい記録がなされています。子供の予防接種について相談する際は、必ず母子手帳を持参しましょう。

● ワクチンは薬局で購入

予防接種も多くの場合は医師の書いた処方箋を持って薬局で購入、その後に医師からそのワクチン接種を受けることになります。ワクチンの種類によっては医療施設に置いてあるものもあります。

● 生ワクチン接種後は4週間の間隔を

子供の麻しんやおたふく風邪の生ワクチン接種後4~6週間は、別のワクチン(不活化ワクチン、生ワクチンにかかわらず)の接種はできません。黄熱病の予防接種も生ワクチンです。複数の予防接種が必要な場合には、まず投与スケジュールについて医療機関と相談しましょう。

● 予防接種は義務ではありませんが

ドイツのSTIKOから推奨されている予防接種は、接種を義務付けられているわけではありません。しかし、ドイツの幼稚園への入園や、スポーツクラブでの活動に参加する際に、予防接種の証明書を求められることはあります。

● 予防接種のスケジュールは医師と相談を

例えば、B型肝炎は規定の回数の予防接種終了後4週間で十分な予防効果が確立されます。黄熱病は接種後10日後から予防効果があります。初夏脳炎ワクチンは1回目の接種後、早くて10日ほどで抗体の上昇がみられます。いずれにしても、翌日から予防効果がある予防接種はありません。

 

 
  • このエントリーをはてなブックマークに追加


馬場恒春 内科医師、医学博士、元福島医大助教授。 ザビーネ夫人がノイゲバウア馬場内科クリニックを開設 (Oststraße 51, Tel. 0211-383756)、著者は同分院 (Prinzenallee 19) で診療。

同コーナーでは、読者の皆様からの質問を受け付けています。
ドイツニュースダイジェスト編集部
Fax: 0211-357766 / Email: info@newsdigest.de

Nippon Express ドイツ・デュッセルドルフのオートジャパン 車のことなら任せて安心 習い事&スクールガイド バナー

デザイン制作
ウェブ制作