労働者をねぎらうビールの王様
5月1日は、世界全土で労働者の祭典「メーデー」。ドイツも例にもれず、「Tagder Arbeit」として祝日に。労働者が主体となって労働環境の改善や賃上げを訴えるのだが、この季節、大都市での集会やデモ行進はドイツの風物詩にもなっている。ビールを愛する労働者としては、まずは毎日頑張る自分や家族を「お疲れさまの一杯」でねぎらいたい。
今回ご紹介する「König Pilsener」は、デュッセルドルフから北へ30キロほどの場所に位置するデュイスブルクのビールだ。ケーニヒ(=王様)ピルスナーの優しい麦芽の風味とノーブルなホップの苦みは、まさにビールの王様の名にふさわしいが、その名称は創業者であるテオドール・ケーニヒに由来する。
ケーニヒは、25歳で醸造家になることを心に決め、ウィーンやボヘミア地方で5年間の醸造修業を積んだ。当時、ボヘミア地方のピルゼンはピルスナーが誕生したばかりで、新進気鋭のビールの街だった。その後、ケーニヒはドイツに戻り、1858年に醸造所をデュイスブルクに構える。この場所はビール醸造に必要な豊かな水源があるだけでなく、「ビールを必要とする労働者たち」が大勢いたのだ。この街はライン川とルール川の合流地点に位置し、水運と石炭採掘を背景に、ルール工業都市として成長中だった。
ピルスナーは低温で熟成させる必要があり、それ以前のビールとは異なり冷蔵設備を必要とする。同時期に興った産業革命により、いち早く冷蔵設備がビール造りにも取り入れられたこと、肉体労働者に愛飲されたことで、この醸造所は発展した。2004年には世界的なビール企業であるビットブルガー・ホールディングスの一員になり、販路を広げている。
ゴクゴク飲める軽快なピルスナーは、今や世界中で愛飲されるビールの王様。「König Pilsener」もルール工業地帯の労働者ののどの渇きを癒やし、ドイツの発展と共に成長してきたビールなのだ。