2015年は、ドイツとイスラエルの国交樹立50周年という節目の年。これを記念して、ポツダム広場から近いマルティン・グロピウス・バウ(Martin-Gropius-Bau)ではテルアビブ美術館展が開催されています。
西ドイツ(当時)とイスラエルとの間で国交が結ばれたのは、1965年5月12日のこと。第2次世界大戦中、ナチス・ドイツにより約600万のユダヤ人が犠牲になったホロコーストの記憶は、この両国の間に重く複雑なしこりを残しました。1932年に創設されたテルアビブ美術館は、特に20世紀の近現代の作品で充実したコレクションを誇りますが、今回展示される作品のうち約70点は、初めて欧州、またはベルリンで公開されるといいます。
同展では、絵画、彫刻、グラフィックアートの分野で重要な潮流を生み出した20世紀の作家の作品がテーマごとに展示されており、さらに、それに並行して現代イスラエルのビデオアートやインスタレーションが対峙して紹介されているのが特徴です。
ワシリー・カンディンスキー『ムルナウ、緑の家のある風景』(1909年)
「都市と田舎」と題された最初の部屋では、ポール・シニャックやワシリー・カンディンスキーらの牧歌的な風景画の傍らに、テルアビブの街中で撮られた映像作品が並んでいます。また、「混乱した惑星」という部屋には、抽象表現主義のマーク・ロスコやジャクソン・ポロック、シュルレアリスムのマックス・エルンストらの作品と並んで、「ガザ地区が地震により内陸部から隔てられ、もはや紛争のないリゾート地に変貌した」という架空のプロモーションビデオ「ガザ運河」が上映されるなど、現在のイスラエルの政治状況ゆえに人々が求めるユートピアへの憧れも感じられました。
奥の「ベルリン」という名の部屋には、マックス・リーバーマンの自画像をはじめ、ルートヴィヒ・マイトナー、マックス・ペヒシュタインら、戦前ベルリンで活躍した表現主義の画家の作品が並びます。1933年から47年まで美術館の初代ディレクターを務めたカール・シュヴァルツはベルリン出身の美術史家で、それゆえにドイツの表現主義のコレクションが多いのだそうです。そのほか、ピカソ、シャガール、ムンク、モネ、ジャコメッティといった著名な芸術家の作品も、展示の大きな目玉になっています。
マルク・シャガール『孤独』(1933年)
この展覧会は、ベルリンとテルアビブ両都市のキュレーターによって構想されたとのこと。重く複雑な歴史背景を持つドイツとイスラエル。しかしまた、それゆえに両国の間には唯一無二の関係が育まれてきたと言えるのかもしれません。開催は6月21日まで。
Jahrhundertzeichen. Tel Aviv Museum of Art Visits Berlin: www.gropiusbau.de