ドイツの球技と言えば常套句(じょうとうく)でサッカーが挙げられますが、野球を楽しむ人々も各地に増えてきました。ドレスデンでも野球観戦ができると聞いて、3月の末日に出かけてきました。
戦後の米国占領の歴史から旧西独では終戦間もなく野球が広まり始め、1980年代にはブンデス・リーガが誕生しました。それより遅れて、旧東独では1990年代から都市で野球チームが結成されるようになります。ドレスデンの野球チーム「ドレスデン・デュークス」が生まれたのもその頃で、米国で人気のスポーツに興味をもった人々が結成。現在、一軍二軍チームにはインターナショナルなメンバーが集まり、中部ドイツ地域リーグに所属しています。選手は皆傍らで別の仕事をするアマチュアチームですが、毎週練習を行い、力をつけています。
ベルリンチームの攻め
今回はシーズン初の試合で、対するは経験豊富なベルリンチーム。ドレスデンのホームグラウンドは野球専用ではないので、試合前に線を引くなど準備をしなければなりません。マウンドは移動式、そのほかは芝なので選手が走りづらいところもあります。地域リーグでは、週末に7イニング(回)の試合を同じ相手と1日2回行います(ブンデス・リーガでは9イニングを2試合)。そのため選手層の薄いチームにとっては厳しい条件でもあるのです。
1試合が終わり、ほっとするメンバーたち
メンバーが増えたとは言え、旧東独地域で野球はまだまだ少数派スポーツです。サッカーやほかの球技に比べると野球はスピード感がなく退屈だと思われがちで、一般の人々にルールを理解してもらうのも一苦労だとか。それでも興味を持ち、始める人は確実に増えています。最近では道具やユニフォームはインターネットで購入でき、ピッチングマシンも取り寄せ可能です。同じ団体で主に女性が所属するソフトボール・チーム、子どもたちの野球チームもあり、それぞれが毎週集まって練習を重ねています。メンバーに野球の魅力を尋ねてみると、「一人ひとりがそれぞれの役割を果たしながら、チームで戦略的に攻守する」ところに面白さがあるとのこと。チームの団結が欠かせないスポーツだからこそ、試合中は掛け声を出して士気を高め合っていました。
日本で観戦も含めた野球経験のある私たちが、ドイツで再び野球と出会うと懐かしい気持ちになります。シーズン最初の試合は残念ながらデュークスの負けで終わりましたが、スポーツが人々の興味の枠を広げ交流の一歩となることを知り、清々しい気持ちの試合観戦になりました。
デュークスナイン
Dresden Dukes: www.dresdendukes.de
東京都出身。ドイツ、西洋美術への関心と現在も続く職人の放浪修行(Walz ヴァルツ)に衝撃を受け、2009年に渡独。ドレスデン工科大学美術史科在籍。