「この世界は芸術家の目にどのように映っていたのだろう?」。皆さんはこのような疑問を持ったことはありませんか? 一つの作品を鑑賞する上で、当時の作者が何を見て何を感じていたのか、それらをもし自分自身でも経験することができるのであれば、きっと作品の見え方も変わってくるでしょう。
ジヴェルニーの庭を再現した展示スペース
今回ご紹介するのは、現在ドレスデンで開催中の期間限定展示「Monets Garden」です。キャッチコピーは「Ein ImmersivesAusstellungerlebnis」(没入体験型展覧会)。最新技術と音楽が駆使されたこのイベントでは、来館者がクロード・モネの世界観に文字通り入り込んで体験できるものとなっています。
映像が始まると年齢層問わず息をのむ
私が会場を訪れたのは日曜日の午前10時。中心街から若干離れているにもかかわらず、すでに老若男女問わず長蛇の列が。当然ながら当日券は売り切れで、事前に予約したオンラインチケットを片手に会場内へと足を踏み入れました。
真っ暗な会場内を進むと、最初に現れたのはモネの絵画と謎のQR コード。何やらそのQR コードをスマートフォンで読み込むと、特別なフィルターが使用できる仕組みで、絵画に映り込んだかのような写真が撮れるのです。そのほかにもCGを駆使した等身大サイズの絵画展示や年表があり、彼が「光の画家」と呼ばれるまでの苦悩やスランプ、そして彼の代表作「睡蓮」の誕生秘話などが細かく説明されていました。
細やかな筆のタッチまでも鑑賞できる
モネの代名詞ともいえる「睡蓮」シリーズですが、実は日本と興味深い関係があったことをご存知でしょうか? 50代前半だったモネはフランスのジヴェルニーに引っ越した際、庭に多様な花々を植えて彩り、また日本風の太鼓橋が架かる美しい睡蓮の池を造ります。その橋と睡蓮からインスピレーションを受け、誕生したのが「睡蓮」シリーズです。その後27年ほどにわたって約250枚の絵画を生み出したのですから、モネの思いの深さが伝わりますね。
そして次は、その「睡蓮」の世界に「没入」する時間です。奥へ進み真っ黒のカーテンを引くと、そこには見渡す限り色鮮やかなモネの睡蓮の世界が広がっていました。100人ほど入りそうな広々したその空間は、まるで万華鏡をのぞいたときのように色鮮やかでした。従来の美術館のように視覚的な「見る」「鑑賞する」という行為に音楽やCG映像が加わり、まるでモネの「睡蓮」の世界に身を置いた気分になりました。
芸術家として、絵の対象物だけでなくその空間に存在する美を描くことを目指した光の画家、クロード・モネ。今回の先端技術を駆使した展示ではさらに多くの人を魅了したに間違いありません。皆さんもこの新感覚の展示でモネの世界に「没入」してみてはいかがでしょうか。
高校・大学時代にカナダと英国へ留学し、日本での就職を経て、2020年10月に渡独。現在はドイツのおにぎり屋さん「Tokyo Gohan」にて広報および経理をサポート。趣味はロードバイクとランニング。ドイツ国内外の旅行兼マラソン大会出場のため、日々トレーニング中!