ジャパンダイジェスト

鉄道博物館

欧州の大都市には、築100年以上は経っている、半ば現役、半ば引退、あるいは放置状態の鉄道・港湾関係の大規模な施設が多く見受けられます。ご多分に漏れず、ドレスデンにも現役と廃墟が同居したようなドイチェ・バーン(ドイツ鉄道)の敷地がありますが、その一角に鉄道博物館(Eisenbahnmuseum Dresden-Altstadt)があり、市民に親しまれています。

1872年に建てられ、1995年まで現役だった車庫が博物館に転用されているのですが、この周辺の広大な敷地はいまだにドイチェ・バーンの所有地で、すぐ脇を何本もの線路が走っています。さらに、役目を終えたチョコレート製造工場やドイチェ・バーンの旧施設がいくつも立ち並び、豪壮で迫力ある一大廃墟街となっています。何と言ってもこの博物館の醍醐味は、実際に使用されていた施設に、歴代の蒸気機関車から旧東ドイツ時代の電気機関車までが展示されていることです。

蒸気機関車
ずらりと並ぶ蒸気機関車は圧巻

4月5~7日、同博物館で第5回ドレスデン蒸気機関車集会(Dresdner Dampfloktreffen)が開催され、多くの鉄道ファンや家族連れが訪れました。直前の新聞記事には「日本やフランス、米国からの鉄道ファンの訪問が期待されている」と記載されており、どうやら日本人の鉄道ファンは、かなり有名なようですね。他都市からも蒸気機関車が集められ、総勢43台が揃いました。この43台のために、延べ1万1000時間が清掃や修理に費やされたそうです。

「機関車トーマス」でお馴染みの弧を描く線路とその前の回転台、そして車庫に蒸気機関車がずらりと勢揃いした様子は、まさに圧巻! 蒸気機関車はもちろん、線路も敷石のサイズも、すべてがヒューマンスケールを超えていると感じました。蒸気機関車ファンにはたまらないグッズを扱うスタンドが並び、蒸気機関車の運転台への試乗や、機関車が車庫から出て回転台で向きを変えて走り去るデモンストレーションなど、イベントも盛りだくさんでした。

車両回転台
車両回転台に釘付けの来場者。橋の上も鈴なりです

イベントの脇で行われていたのが、石炭の積み込みや給水の作業。想像以上に時間が掛かるようで、一体どれほどの石炭と水が積載可能なのかと思い、車体をチェックしてみたところ、石炭10トンと水30㎥という組み合わせが多く見られました。車体にもよりますが、ドレスデン~ベルリン間の180kmを走行するために必要な石炭は約4トンとのことで、前述の積載量なら往復が可能という計算になります。産業革命以降、欧州全土を疾走していたすべての蒸気機関車の石炭消費量を想像すると気が遠くなりますが、それに比例して、乗せた夢と与えた夢も一際大きかったのだと思います。

www.igbwdresdenaltstadt.de

福田陽子さん福田陽子
横浜出身。2005年からドレスデン在住。ドイツ人建築家の夫と娘と4人暮らしの建築ジャーナリスト。好奇心が向くままブログ「monster studio」公開中。
http://yoyodiary.blog.shinobi.jp/
 
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