ジャパンダイジェスト

伝統のイースターエッグ

クリスマスシーズンに各地でクリスマスマーケットが立つように、イースター(復活祭)前にはイースターマーケットが開かれます。今回は、3月にフランクフルト市内中心部のドミニコ会修道院(Dominikanerkloster)で行われた第28回イースターマーケットの模様をリポートします。

イースターマーケットの目玉は、何と言ってもイースターエッグ。会場のホールはもちろん、廊下や踊り場にもブースが建ち並び、アーティストご自慢の作品が出店されます。イースターエッグと聞くと、つい卵形のチョコレートを思い浮かべてしまう私ですが、ここではそんな想像の域を超えた様々なデコレーションエッグに出会いました。ガラス職人が巧みに色付けをしたカラフルなガラスのエッグ、卵形のロウソクに押し花を貼り付けたキャンドルエッグ、ヘッセン地方の伝統衣装を描いた油絵のエッグ、繊細なレースを卵形に編んだレースエッグ、布を組み合わせて卵に縫い付けたパッチワークエッグ、精巧な切り絵を貼った切り絵エッグなど、こんなにも種類があるのかと驚きました。

マールドルフのイースターエッグ
マールドルフのイースターエッグ。
ろうけつ染めにより伝統の絵柄を卵に入れる

中でも特に素晴らしかったのが、伝統的な模様が描かれた2種類のイースターエッグです。1つ目は卵を薄く削って模様を付けたエッチングエッグ。色付けされた卵に、レースのような細かい編み模様が浮かび上がります。1つひとつ丁寧に削られた作品は、卵とは思えないほどの美しさでした。

2つ目はヘッセン州マールドルフという町から来た、「ろうけつ染め」という手法を用いたエッグ。作り方は、純正の蜜蝋を使って卵に細やかなモチーフを描いた後、温めた染料につけます。すると、地の部分は鮮やかな色に染まり、蝋で覆われた部分は、温められた染料の中で徐々に溶けることで模様が白く染め残ります。染色時間が長過ぎると蝋の部分にも色が入ってしまうので、微妙な見極めが必要です。一筆一筆丁寧に描かれた緻密な模様は、まさに職人芸。巧みな染色技術と、民族衣装などの伝統的な絵柄を基にしたデザインは、何世代にもわたり親から子へ受け継がれてきたそうです。ものにもよりますが、完成までには鶏卵1個で約3時間、ガチョウなどの大きな卵だと、何日も掛かるのだとか。万年筆のようなペンと先に極小の丸いピンがついたペンを使い分けて美しい模様を生み出すのだと、職人さん自らが説明してくれました。

日本人にはあまり馴染みのないイースターですが、今年は私も伝統のイースターエッグを飾って春の訪れを祝いたいと思います。

イースターエッグ
2本のペンを使い分け、卵に蜜蝋で模様を描いていく

ユゴ さや香
2003年秋より、わずか2週間の準備期間を経てドイツ生活開始。縁もゆかりもなかったこの土地で、持ち前の好奇心と身長150cmの短身を生かし、フットワークも軽くいろんなことに挑戦中。夢は日独仏英ポリグロット。
 
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