今年3月4日、フランクフルトで第6回目となる邦楽と日本舞踊の発表会が開かれました。日本舞踊を始め、箏(こと)や尺八、剣舞といった日本の伝統芸能を習う人たちが日頃の成果を発表し、先生方が演舞や演奏を披露しました。艶やかな日舞から躍動感あふれる剣舞、箏(こと)と尺八の合奏など、ドイツとは思えないほど多彩で充実した日本らしさを感じる素晴らしい舞台でした。そんな中でも特に印象に残ったのが、西川扇夢二(にしかわせんゆめじ)さんこと永井佐知子さんによる創作舞踊です。チェロとフルートの生演奏による洋楽に合わせた舞は、日本舞踊の通念を覆す衝撃で、その幻想的な美しさとほかに類を見ない独創性豊かな世界に会場中が惹き付けられました。チェロとフルートの調べに乗って繰り広げられる踊りは、洋楽と日本舞踊という新たな融合に、圧倒的な表現力と技術で応えた素晴らしい演目でした。
6歳で日本舞踊を始めた西川さんですが、ドイツに来た当初はドイツで日本舞踊をするとは思ってもみなかったそうです。ドイツの生活に慣れるのに精一杯で踊りたくても踊れないのが辛く、一度は日本舞踊を諦めた西川さん。やっと自分の時間が取れるようになった頃、やはり自分には日本舞踊しかないと、3年前から日本舞踊教室を始めました。生徒は皆この教室で踊りを始めた人ばかりで、立ち・座り・お辞儀の基本作法から丁寧に指導します。
日本舞踊の生徒さんたちと
日本舞踊と同時に着物の素晴らしさも伝えたいと、着付け教室も始めました。自分で着物を着たことがな かった私も参加しましたが、1コース8回のお稽古だけで襦袢から着物、3種類の帯の締め方までも習うことができました。今では観劇などに着物で出かけたり、着物仲間と食事に行ったり、すっかり着物の魅力には まって楽しんでいます。
Trio風雅として創作舞踊を踊る西川扇夢二さん、フルートの伊藤むつみさん、チェロの上原ありすさん
「ドイツでできる最大限の方法で日本舞踊や着物を楽しんでほしい」と、日本舞踊と着付けを教える西川さん。生徒としてもドイツだから こそ気負わず着物を着たり、日本の良さを気軽に楽しめるように思います。「ドイツで大好きな 日本舞踊と着物を通じ、素晴らしい人々と出会い、その繋がりに感謝しています」と語る西川さんは、 教室で指導する一方、舞踊家として在バチカン日本国大使館主催 記念イベントで日本舞踊を披露したり、伝統的な日本舞踊を踏まえた上で新しい日本舞踊を創作したりと意欲的に活動しています。日本の伝統文化を一人でも多くの人に知ってもらえるよう、同じ在独日本人として、西川さんを応援していきたいと思います。
西川扇夢二さんHP:www.facebook.com/NishikawaSenyumeji
2003年秋より、わずか2週間の準備期間を経てドイツ生活開始。縁もゆかりもなかったこの土地で、持ち前の好奇心と身長150cmの短身を生かし、フットワークも軽くいろんなことに挑戦中。夢は日独仏英ポリグロット。