「Alte Druckerei」でコンサートがあると聞いた時、「印刷所でコンサート?」と驚きました。Alte Druckereiを文字通りに訳すと「旧印刷所」。調べてみたところ、確かにそこでは1892年から印刷業が営まれており、一時は100名以上が働いていたといいます。ところがその後1948年になると、印刷業の傍ら、ユース・オーケストラの練習場や人形劇場としても使われるようになりました。そして現在では、印刷業からは完全に撤退したものの「AlteDruckerei」という名称は残され、ワインセラーが併設された多目的スペースとなっています。
Alte Druckereiの外観。この地域にはこういう建物が多いです
週の4~5日はコンサートや講演会、アートの展示会など、何らかのプログラムが催されており、なかには無料のものもあります。ホールは半地下にあり、70~80席くらいのこじんまりとした空間なので、ソロ演奏や室内楽に向いています。一般的なコンサート会場とは違い、演奏者と聴衆が同じフロアで、しかもその距離がとても近いので、聴衆には演奏者の息遣いまで聞こえそう。演奏者の方は、慣れないうちは聴衆との距離が近すぎて緊張するかもしれませんが、慣れてしまえば聴き手との一体感が感じられ、演奏するのが楽しくなるのではないかと思いました。また、同会場を特徴づけているのは、なんといってもワインセラーがあること。会場には椅子だけでなくテーブルもセッティングされていて、お花が飾られ、コンサートの最中もワイングラスを傾けながら音楽を楽しむことができるのです。なんと贅沢なことでしょう。
同会場を初めて訪れた時は、ピアノのコンサートが開かれていたのですが、その直前に絵画教室が行われていたようで、そのまま会場に残って絵を描きながらピアノ演奏を聴いている人が何人もいました。かしこまったコンサートではなく、アットホームでリラックスした雰囲気がとてもすてきです。コンセプトとしては、ワインを楽しむお店で生演奏が聴けるという感じなのかもしれませんが、BGMとしてではなく、皆さんしっかりと音楽に耳を傾けています。今回はチェロとピアノのデュオコンサートを聴きました。定期的にフラメンコのコンサートもあるようで、まさにワインにピッタリですね。興味を持たれた方は、ぜひウェブサイト(下記)でプログラムをチェックしてみてください。
ワインがずらり
聴衆が目の前に。テーブルには飲みものが置かれています
ワインショップとしての開店時間は、なんと水・金・土・日の16:00~(しかも土日は不定休)と、コンサートがある日の18:00~のみ。これでお商売が成り立つのかしら……と余計な心配をしてしまいました。いずれにしろ、一度訪れてみる価値ありです。入口は奥まったところにありますので、探しつつ行ってみてください。
Alte Druckerei Ottensen: Bahrenfelder Str. 73d, 22765 Hamburg www.alte-druckerei-ottensen.de
ハンブルグ日本語福音キリスト教会牧師。イエス・キリスト命。ほかに好きなものはオペラ、ダンス、少女漫画。ギャップが激しいかしら?
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