ここ北ドイツでは、冬の到来とともにあちこちでグリューンコール(Grünkohl)を見かけるようになります。日本では青汁の原料として使われている「ケール」のことです。キャベツの原種で、濃い緑色の葉は肉厚で縮れていて、少し苦みがあります。スーパーの野菜売り場に大きなビニール袋に詰め込まれたグリューンコールが並び始めると、「あぁ、また寒くて長~い冬がやって来た」とため息をついてしまいます。
栄養満点のグリューンコ-ル
「グリューンコールあります!」と看板を掲げるレストランも多く、期間限定特別メニューとしても登場。北ドイツ、特にハンブルグやシュレスヴィヒ=ホルシュタイン州、ニーダ-ザクセン州では、グリューンコールはまさに冬の風物詩なのです。この何てことない地味な風貌の緑の葉っぱには、実はさまざまな栄養が含まれています。ビタミンはもちろん、鉄やカルシウム、タンパク質も豊富でまさに「スーパーフード」なのです。
グリューンコールの歴史はとても古く、すでに紀元前3世紀頃、地中海の周辺地域で栽培されていました。古代ギリシャやローマ時代には薬草として用いられていたそうです。ドイツでは16世紀頃から一般家庭の食卓にも登場し、特に北ドイツで多く食されていたようです。今でこそ一年中あらゆる野菜が手に入りますが、昔は太陽光が少ない暗く長い冬にビタミン不足を補うため、グリューンコールは貴重な栄養補給源だったのでしょう。
グリューンコールの甘みが増しておいしくなるのは、畑に霜が降り、その寒さにさらされてから。寒ければ寒いほど栄養も味も良くなるなんて不思議ですね。料理の仕方はさまざまですが、伝統的なのは、大きなお鍋に肉の塊やソ-セージと一緒にコトコト何時間も煮込んだ豪快な料理。炒めたジャガイモか、ゆでたジャガイモを添えていただきます。シュレスヴィヒ=ホルシュタイン州では、炒めたジャガイモに少し砂糖を振りかけるのが定番。グリューンコールの苦みが砂糖で中和されるのでしょうか。
じっくり煮込んで作られています
先日、そんな伝統的なグリューンコール料理を食べに、地元住民の同僚のおすすめレストランに行って来ました。ハーゼラウという小さな村にある唯一のレストラン「リーナウ」。この地域独特の郷土料理が自慢で、いつも地元のお客さんでにぎわっています。早速いただいたグリューンコールは、ほんのり苦く、割とあっさりして美味。砂糖のかかったジャガイモとの相性もばっちりです。ぽかぽかと体が温まる料理で、幸せな気分になりました。北ドイツの人々がグリューンコール好きなのにもうなずけます。エネルギー価格の高騰で何かと節約節約の今年の冬。グリューンコールでしっかり栄養をつけて、乗り切りましょう!
お肉多すぎ!?
ハンブルグ郊外のヴェーデル市在住。ドイツ在住38年。現地幼稚園で保育士として働いている。好きなことは、カリグラフィー、お散歩、ケーキ作り、映画鑑賞。定年に向けて、第二の人生を模索中。