1月1日0時、子どもたちとカードゲームで遊んでいたら、一斉に花火が打ち上げられました。こういう年越しにまだ慣れぬ自分を感じつつ、遠くに瞬く火花に目を引かれます。数日後、路上にほったらかしにされた打ち上げ花火の残骸が雨に濡れているのを見て、このゴミを誰が片付けるのだろうかと考えていたら、「恩恵を受けるのは3世代、負担を強いられるのは3000世代」という言葉が頭に浮かびました。
年始に街で見かけた、打ち上げ花火の残骸たち
それは、昨年11月にハレで行われた「Forum Endlagersuche 2023」というイベントで聞いた言葉でした。数万年以上かかるといわれる高濃度放射性廃棄物の処分方法を検討するため、政治家や専門家、活動家に加え、一般市民や学生、誰もが参加できる公開シンポジウムです。2023年4月、ドイツの全ての原子力発電所は停止しましたが、放射性廃棄物の処分方法はいまだ不透明。いつ、どこへ、どのようになど、いくつもの大きなクエスチョンマークを抱えたまま、大半の廃棄物は発電所敷地内に保管されています。再統一前のドイツは、東西それぞれが処分場を造りました。しかし、その処分場選定プロセスは地元住民の声が反映されたものでなく、後に大きなスキャンダルを引き起こします。例えばニーダーザクセン州のアッセでは、旧岩塩鉱山の構造を利用し、地下750メートルにプルトニウムを含む放射性廃棄物を地層処分しました。しかしその後、地下水の流入が起きたことが分かり、恒久的な安全性が確保できないことからいったん地層処分した廃棄物を取り出すことが決まりました。それにかかる作業量、費用は莫大です。
Forum Endlagersuche 2023には200名以上が参加
このような過ちを繰り返さないためには、今回のフォーラムのような議論の透明性と市民参加が重要になります。最終処分場といえば、フィンランドのオンカロが有名です。ドイツでも同じく地層処分の方針を立てており、国土の中から、安全性が高い地層の調査が進められています。フォーラムでも安全性を重視した選定計画が発表されましたが、それに対してスピードアップを強く求める声も多く聞こえてきました。
会場には、若者の姿も多く見られました。なかには、核のゴミについて学習をしてからフォーラムに参加しているという学校の生徒たちも。どんな事前学習をしたのか生徒に尋ねてみると、ロールプレイングによるディスカッションが面白かったと答えてくれました。住民、専門家、活動家、政治家などの役割を与えられ、それぞれの立場の主張を通じて、論点を整理するやり方です。これからの原子力業界は、若者の働き手が減ることが懸念されています。世代を超えた課題に、次世代の若者たちが参加していることに希望を感じるとともに、僕自身も原子力エネルギーの恩恵を受けた世代として、未来の世代のために自分ごととして取り組んでいかねばならぬという責任を改めて感じました。
神戸のコミュニティメディアで働いた後、2012年ドイツへ移住。現在ブラウンシュバイクで、ドキュメンタリーを中心に映像制作。作品に「ヒバクシャとボクの旅」「なぜ僕がドイツ語を学ぶのか」など。三児の父。
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