ハノーファーのカーシェアリング事業「シュタットモビール・ハノーファー(Stadtmobil Hannover)が昨年、設立20周年を迎えました。カーシェアリングは、1988年にベルリンで始まったのを皮切りにドイツ各地に広がり、ハノーファーでも92年にスタート。この街では車だけでなく、ボートやバイク、ソーラーパネル、カヌーのシェアも行われるなど、その先進的な試みが注目を集めてきました。当初は公益団体という形で始まりましたが、会員の増加に伴い、2005年より有限会社に。現在は4200の個人、団体、企業会員が約200台を共有しています。普通乗用車や小型車のほか、輸送用バンやスポーツカー、ハイブリットカーなど様々な車種があり、車は市内各地に散らばっています。
2012年5月、エコ関連のイベントに参加したシュタットモビール・ハノーファー社
カーシェアリングの利用は会員制。私も会員ですが、ちょっとした買い物や家族、ゲストの送り迎えなどに気軽に使えるので重宝しています。レンタカーと違い、駐車場や保険加入の心配は無用で、1時間単位での予約が可能です。ネットで空き状況を確認して予約したら、ICチップ入りカードで鍵を開けて出発! 支払いも口座自動引き落としで手間要らずです。
会費は入会金が49ユーロ、年会費が60ユーロ。デポジットとして500ユーロが掛かります(退会時に返却)。使用料は時間と走行距離によって算出され、普通乗用車なら1時間当たり2.50ユーロに、走行距離1km当たり27セント(ガソリン代込み)が加算されます。例えば、2時間借りて20キロ走る場合、約10ユーロ。この地域の公共交通機関の定期券を持っている人なら、月額7.95ユーロの追加費用を払えばカーシェアリングに加入可能で、ドイチェ・バーンのバーンカード25(チケット25%引き)やタクシー料金20%引きという特典も受けられます。また、昨年7月から乗り捨てや、終了時間を先に決めず、使用した時間分だけ支払うオープンエンドのサービスも始まりました(詳細はwww.hannovermobil.de参照)。
同事業は、約1400台の自動車の削減に繋がったと言われます。各個人が車を所有すると環境への負荷が大きく、燃料代や税金、保険などで出費がかさむ上、駐車場を見付けるのも至難の技。年間の走行距離が1万2000km以下なら、カーシェアリングの方が経済的なのだとか。マイカーを持っている家庭にも、セカンドカーとして最適です。
車を持つことがステイタスだった時代は去り、今は資源を大切にしつつ、限られた出費でいかに自分らしいライフスタイルを実現するかが問われています。ハノーファーには年会費無料のフォルクスワーゲンのカーシェアリング「クイックカー」もあり、市場は活気付いています。
カーシェアリングできる車種には、オープンカーもある
日本で新聞記者を経て1996年よりハノーファー在住。社会学修士。ジャーナリスト、ドイツ語通訳に『市民がつくった電力会社: ドイツ・シェーナウの草の根エネルギー革命』(大月書店)、共著に「お手本の国」のウソ(新潮新書) など。