ジャパンダイジェスト

新しい路面電車が登場

ハノーファーにこのほど、新しいタイプの路面電車がお目見えしました。緑とシルバー、黒のモダンなデザインで、名称はTW3000。広い車内と座席半ばまである大きな窓が特徴で、欧州連合(EU)基準に則り、手すりはオレンジに統一されています。運転手はバックミラーではなく、カメラとモニターで車両外側の安全を確認します。路面電車としては初めて冷房も完備! といってもクーラーではなく、外の温度と同じにする空気冷却装置です。窓がほとんど開けられないため、これまで真夏は蒸し風呂状態でしたが、新車両の中は少なくとも外の温度と同じに保たれるのです。

ハノーファー, 路面電車, TW3000
お披露目前に、車庫で整備中の第1号

扉の上には信号のように赤、黄、青のLEDランプが付いています。緑は乗車可能、黄色は閉まっていてもボタンを押せば扉が開き、赤は扉が開けられない状態を示します。今後、計100台が導入される予定で、30年前に走り始めた緑の車両TW6000と徐々に置き換えられていくことになっています。

TW3000を製造するユーストラ社(Uestra)はハノーファー市と周辺町村がほぼ100%出資している株式会社。1892年に設立され、市と周辺町村に路面電車とバスを走らせています。路面電車の路線は12本、バス路線は40本、停留所は計890カ所に上り、1日延べ40万人、年間1億5400万人が利用しています。公共性の意義が高いため赤字分は自治体が補てんし、同社は市の環境政策を受けて環境にやさしい経営に取り組んでいます。2008年からハイブリッドバスを導入し、燃料とCO2を25%削減したほか、今年から試験的に電気バスも走らせる予定です。

路面電車はブレーキをかける際、1.2~1.3kWhの電力を生み出します。その電力を送電線に戻し、次に来る電車が使える仕組みになっています。そもそも路面電車を利用することは気候保護につながります。というのも、乗用車では1kmの走行で1人当たり134.6gのCO2を排出しますが、路面電車では75gと約半分。また、運転手がブレーキや加速の仕方をコントロールすることで燃料のロスを防ぐことができます。2000年に完成した市西部のラインハウゼン地区の路面電車整備場には、容量530kWという市内最大のソーラーパネルを設置し、年間250mWhを発電。車両洗浄やトイレには雨水を使い、一部をリサイクルしています。室内は自然光を最大限に活用し、足りない分のみ人工照明を使っています。

太陽光発電, ソーラーパネル
ユーストラ社の社屋には太陽光発電装置が付いている

省エネやエネルギーの効率化はコスト削減と新技術の導入を促し、経済性を高めます。エコロジーはエコノミーを実践。ユーストラ社は市民に便利な移動手段を提供するだけでなく、環境負荷を最小限にとどめる努力もしています。

 

田口理穂(たぐち・りほ)
日本で新聞記者を経て1996年よりハノーファー在住。社会学修士。ジャーナリスト、ドイツ語通訳。著書に『市民がつくった電力会社: ドイツ・シェーナウの草の根エネルギー革命』(大月書店)、共著に「お手本の国」のウソ(新潮新書) など。

 

 

 
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