ライプツィヒ北西部の緑豊かで閑静な住宅街に、「ヒンリッヒジン30 (HinrichSINNdreißig)」というアンティークショップがあります。かつては肉屋だったという65㎡の店内には、長さが4m以上もある100年前のノコギリザメのはく製や馬や牛の蹄鉄、1850年代の木馬、バウハウス時代の椅子や机など、個性豊かなアイテムが並び、独特な雰囲気を醸し出しています。お店のコンセプトは、「古い物に新しいアイデアを加え、特別なモノとして生き返らせること」だそうです。
様々な分野の特別なモノがぎゅっと集められた店内
オーナーはマヌエル・オーバーヴィーンさんと、パートナーのカローラ・シュタートさん。15歳の頃から毎週末のようにリュックを背負って蚤の市巡りを楽しんでいたというマヌエルさんは、大手家具チェーンIKEAの制作部で働いていた頃、カローラさんと出会いました。彼女は長年、ミュンヘンの広告会社に勤めていましたが、物を売るだけではなく、生活を豊かにするようなお店を出したいと、ずっと考えていたそうです。そして マヌエルさんと共に育んできたその夢は、ビジネス支援者に恵まれたこともあり、2011年にアンティークショップの開業という形で実を結びました。
マヌエルさんはIKEAの制作部で培った技術を活かして、古いカメラの木製脚立を使った照明器具を作ったり、壊れた家具に別のオブジェを取り付けて再生させたりしています。このお店を訪れる人は、店内にある商品を購入できるだけでなく、自宅に眠っている、機能しなくなった古い物を持ち込んで再生を依頼することもできます。
さらに2人は、インテリアに関するアドバイスも行っています。実際にお客さんの自宅を訪れ、それぞれの部屋に合った照明や家具、絵画など、総合的なコンセプトを提案します。例えば、お店で見て気に入った照明器具を購入して持ち帰っても、実際に自分の部屋にぴったり合うとは限りません。なぜなら、店内の天井高は5mもあり、住宅の空間とは大きく異なるからです。そこで2人は、購入希望者の自宅へ照明器具を運んで取り付けてみて、その部屋に合うかどうかをきちんと確認します。また、職人が古布を使い、伝統的な縫製技術で手作りした鞄やクッションなど、大量生産とは一線を画す商品も取り扱っています。
インテリアに関する総合的なコンセプトもアドバイス
毎週木曜日のランチタイムには、店内でスープも提供しています。かつてケムニッツ市内を走っていた路面電車のベンチに座り、温かいスープを飲みながらオーナーの感性が光る骨董品を眺めれば、ノスタルジックな気分に浸れることでしょう。
Hinrishsenstr.30, 04105 Leipzig
火~金:11:00~19:00 土11:00~14:00:
www.facebook.com/HinrichSINNdreissig
福岡県生まれ。東京理科大学建築学科修士課程修了後、2003年に渡欧。欧州各地の建築設計事務所に所属し、10年に「ミンクス.アーキテクツ」の活動を開始。11年よりライプツィヒ「日本の家」の共同代表。www.djh-leipzig.de