市内最大を誇る聖ニコライ教会の建設は、1165年に開始されました。教会内部の西側は創建当時のロマネスク様式の名残りを残しつつ、15~16世紀には後期ゴシック様式で拡張と改修が繰り返されました。6800本のパイプと5段の鍵盤から成るパイプオルガンは、ザクセン州で最大規模。ドイツ国内でも有数の大きさを誇り、バッハが演奏していたことでも有名です。天井に、若きゲーテも師事したという画家アダム・フリードリッヒ・エーサーによる、天使と虹をモチーフにした絵画が広がり、さらにシュロの木をかたどった列柱が並ぶ内部は圧巻です。
聖ニコライ教会内部の様子
990号(2014年11月21日発行)の本コラムでもご紹介しましたが、聖ニコライ教会は東西ドイツ統一の「市民革命の出発点」として知られるようになり、ライプツィヒの自由の象徴として、現在も重要な役割を果たしています。ちなみに教会前広場には、教会内で行われていた集会「平和の祈り」が、一歩外へ踏み出して大きなデモに発展したことを示す存在として、列柱が1本建てられており、その足元には革命開始の日付と人々の足跡が刻まれたレリーフが埋め込まれています。
我が家の長女は、昨年9月から聖ニコライ教会の幼稚園に通い始めました。12月はクリスマス礼拝が毎週末のように行われ、私たち家族も足繁く教会に通うことになりました。3~6歳の子どもたちが数週間掛けて練習したマリアとヨーゼフの降誕劇も無事大成功を収め、「星」役を務めた娘も満足そうでした。来年さらに成長して、どのような役を演じることになるのか、今から楽しみです。
子どもたちによるマリアとヨーゼフの降誕劇
ここは1905年に設立された、市内でも歴史ある幼稚園で、常時50人の幼児が通っています。子どもたちは年齢に関係なく2つのグループに分けられ、年長の子どもたちが進んで小さな園児の面倒を見る様子はとても微笑ましく、また頼もしくも感じられます。子ども同士の関わり合いだけでなく、この幼稚園では親同士が定期的に交流する行事をはじめ、庭の掃除、子どもたちの中間食の野菜と果物の提供など、親も幼稚園に積極的に関わることができるようになっています。娘は幼稚園に通い始めて以来、日本語を話す機会がますます減ってしまっているのは残念ですが、長い歴史があり、現在もそれが生き続けている場所に日常的に関われることを幸せに思います。聖ニコライ教会は今年で設立850年を迎え、様々な関連の催しが予定されています。
聖ニコライ教会
www.nikolaikirche-leipzig.de
聖ニコライ幼稚園
www.nikolai-kita.de/
ドイツ建築家協会認定建築家。福岡県出身。東京理科大学建築学科修士課程修了後、2003年に渡欧。欧州各地の設計事務所に所属し、10年から「ミンクス・アーキテクツ」主宰。11年より日独文化交流拠点ライプツィヒ「日本の家」の共同代表。
www.djh-leipzig.de