ジャパンダイジェスト

国立エジプト美術博物館の移転

打ちっぱなしのコンクリートの壁とガラスを多用した重厚な建築物。古代美術の博物館とは思えないほどモダンでシンプルなデザインの建物内に、ミュンヘン市が誇る多数の古代エジプトの美術品が所蔵されています。以前はレジデンツ(王宮)内の一角に展示されていた品々が、ピナコテーク(Pinakothek)の近くに新しく建てられた「国立エジプト美術博物館」内に移されたのは、今年6月のことでした。冷たい雨が降り、美術鑑賞には好都合となった9月のある日に、ここを訪れてみました。

存在感のある建物ですが、入口は意外とこぢんまりしています。実際に来てみると、これはピラミッドを模した建物だということが分かりました。管理・保存上の理由から、展示広間は地下に設けられていますが、そこに至るまでの階段は、ピラミッド内部にあるファラオの墓へ降りていくような感覚を呼び起こします。

国立エジプト美術博物館
エジプト美術博物館の重厚な建物。入口は手前にそびえる壁の下

チケット購入の際、音声ガイド(平日&土曜は無料。日曜1ユーロ。ドイツ語のみ)を借りてみました。タブレットのタッチパネルを操作する、最新型のガイドです。館内で常に現在位置を感知し、近くにある展示物を表示してくれるので、ゲーム感覚で使うことができます。さらに驚いたのは、ガイドの情報量の多さです。例えば、ミイラの棺の絵柄について、部分ごとに詳細な解説を聞いたり、展示物が実際にあった場所の写真などを見たりすることができるのです。また、各フロアには大型タッチパネルを使った解説ボードも設けられています。タッチパネルで年表を操作することで、各年代の古代エジプトの発展の様子が地図で壁に映し出されるというボードもありました。これらのボードには英語も表記されています。情報豊富な音声ガイドを短時間ですべて聞くことは無理ですが、ボードなら自分のペースで興味のある展示をじっくりと見ることができます。

タッチパネル
手前のタッチパネルを操作すると、エジプトの発展の様子がボードに映し出されます

興味深かったのは、展示品に触れることができるフロアです。もちろん展示品は本物ではなくコピーですが、彫刻作品に触れ、石の手触りや彫刻の細部を確かめることができます。また、小さな装飾品が納められているケースでは、3D効果の施されたガラスを通して、展示品を立体的に浮かび上がらせていて、鑑賞者の目を引いていました。

遠い古代の品々を、最新技術を介して身近に感じることができる……そんな素敵な博物館でした。

国立エジプト美術博物館:
www.schloss-elmau.de

入場料:7ユーロ
(割引5ユーロ、18歳まで無料)日曜1ユーロ

Y. Utsumi
2002年からミュンヘン近郊の小さな町ヴェルトに在住。会社員を経て独立し、現在はフリーランスとして活動中。家族は夫と2匹の猫で、最近の趣味はヨガとゴルフ、フルート。
 
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