ドイツでは、乗馬は身近なスポーツ。ミュンヘン市内から少し郊外へ出ると、乗馬をしながらゆっくりと自然散策を楽しむ人の姿をよく見掛けます。公園や町を取り巻く自然林、ハイキングを楽しむ山の中に「乗馬OK」であることを示す交通標識が立っていることなどからも、乗馬が日常的に行われている様子がうかがえます。
馬は大型動物なので、誰でも気楽に家で飼うことができるわけではありませんが、厩舎に併設されている乗馬スクールなどで、子どもも大人も馬術と馬への接し方を習うことが可能です。アマチュアやセミプロの乗馬ファンを対象に、国内各地でトーナメントも開催されています。今回は、5月16~18日に行われた馬術競技会「アイスランド種バイエルンカップ2014」についてレポートします。
中世風のコスチュームをまとって馬に乗る騎手
この大会に参加するアイスランド種の馬とは、体高130cm程のポニーの一種。大会は隔年開催で、開催地は毎回異なります。今年は、この馬種を専門的に飼育している「メンツィンガー厩舎(Pferdehof Menzinger)」が会場となりました。出場者リストには、延べ250人の騎手とその愛馬が名を連ねています。体高160〜170cm程の普通の馬に比べて小柄であるためか、騎手は全員女性のようです。
3日間にわたるプログラムは多彩で、メインの4種歩法競技(なみ足、速歩、ギャロップ、トルト)のほか、5種歩法競技(4種にペース=体の左右同じ側の肢2本を同時に動かす速めの側対歩=を加える)、トルト歩法、ペア競技の「パ・ド・ドゥ」、馬場馬術を競う「ドレッサージュ」、障害飛越競技などを見て楽しめました。「トルト歩法」とは、中世ヨーロッパで特に好まれていた歩法で、滑るように「速歩」で走るのが特徴です。騎手に伝わる振動が少ないので、体が上下に揺れず、馬と騎手の動きがとてもエレガントです。しかし、馬車や車の登場によってトルト歩法ができる馬の需要は減少。ブリーダーもほかの馬種に転向してしまい、トルトは一時期廃れてしまったようです。その後、ドイツでは1970年代頃から趣味で馬術を楽しむ人々の間で、トルト歩法を受け継いできたアイスランド種の馬が人気を集め始めました。エレガントな馬上の姿に憧れて、アイスランド種を選ぶ女性が多いのかもしれませんね。
尻尾も飾って、後ろ姿もバッチリ
乗馬は私にとって未知の世界ですが、様々な馬を見比べているうちに「美しい」と思える動きが分かってきました。上手な騎手と良く訓練された馬は、本当に滑るような動きを披露し、観客から拍手喝采を浴びていました。また、騎手たちが思い思いに趣向を凝らした衣装も美しく、目の保養となりました。
アイスランド種のバイエルンカップ www.ipzv-bayern.de/sport/bayerncup
2002年からミュンヘン近郊の小さな町ヴェルトに在住。会社員を経て独立し、現在はフリーランスとして活動中。家族は夫と2匹の猫で、最近の趣味はヨガとゴルフ、フルート。