お城や城塞、美しい街並みや長い歴史を誇る市場など、ドイツらしい観光ポイントの多いことで有名なロマンティック街道は、バイエルン州を南北に貫いています。北のヴュルツブルグから南のフュッセンまで、全長500Kmに及ぶこの街道の真ん中あたりの小さな街、ハーブルグ(Harburg)についてレポートします。
街に近付くと、丘の上にそびえ立つ中世の城塞、ハーブルグ城(Die Harburg、入場有料)が目を引きます。このお城は12世紀から続く歴史を誇り、南ドイツ地方で最も古いものでありながら保存状態が大変良いお城の一つとして知られています。観光客も多く訪れるようで、入り口の案内板には日本語の表記もありました。
城主の館。窓の装飾に領主の紋章デザインが使われている
広い中庭をぐるりと囲んで、異なった時代に建てられた建物や塔が配置され、防御壁である回廊で結ばれています。ガイドツアーがあり、参加しました(ドイツ語、有料)。この城の城主は初期の頃には変遷しましたが、領主であるオッティンゲン家の所有となり、その後家系が別れてオッティンゲン・ヴァラーシュタイン家に引き継がれ、現在は財団を設立して管理されています。
まずは敷地内の教会へ。厚い石造りの建物の内部は冷えびえとしています。興味深かったのは、信者が座る木製ベンチの通路側に扉が付いていたことです。この扉は保温を目的とし、さらにネズミの害を防ぐ効果もあったそうです。さて、次は城壁に上がります。防御を目的とした壁には、あちこちに攻撃用の穴が穿(うが)たれています。遠隔攻撃を狙った弓矢用の穴は縦に細長く、近距離攻撃を意図した穴は城壁に迫った敵を狙える位置に向けて開いています。直径30cmほどの木製の球が埋め込まれた穴もあります。この球にも弓矢用の穴が開けられていますが、壁の穴の中でくるくると球を回せるような構造になっているため、弓矢の方向を変えることができ、さらに敵の攻撃が来た時には球を回して穴を塞ぐことができるという、戦略的な作りです。この仕組みを作るには高度な技術も必要だそうですが、すでに12世紀に実現されていたというので驚きました。
木製の球を使った、攻撃用の穴の仕組み
続いて領主の館や、牢獄として使われていた塔などを見学します。法律制定や貨幣の鋳造(ちゅうぞう)、罪人の処罰権などを持っていた領主の館には、そのための機能が備わっています。牢獄の塔は時代によっては領主家族が籠城(ろうじょう)するためにも使われていたとのこと。ちなみに領主家の紋章は、処罰権を表す赤で敵対者を威嚇し、貨幣権を表す金で富を誇示していたそうです。
客人を歓迎し、領土の繁栄を示すために建設された城内の大広間は、現在は一般の使用が可能になっています。結婚式やお祝い事のためのパーティーの予約ができるので、ロマンティックな雰囲気を味わいたい時にお城は最適な場所かもしれません。
日独の自動車部品会社での営業・マーケティング部門勤務を経て、現在はフリーランスで 通訳・市場調査を行う。サイエンスマーケティング修士。夫と猫3匹と暮らし、ヨガを楽しむ。 2002年からミュンヘン近郊の小さな町ヴェルトに在住。