ジャパンダイジェスト

リアルタイムの建築コンテスト「72HUA」

ライブで建築物を作り、その腕前を競う世界初のリアルタイムの建築コンテスト「72時間アーバン・アクション(72HUA)」が7月半ば、シュトゥットガルトで開催されました。世界各地から集まった10チームが3日3晩掛けて、開催地のニーズに沿った公共空間の建築プロジェクトを設計、構築しました。参加者は、建築家やアーティスト、デザイナー、大工など総勢80人以上。コンテストの主催者であるアート連盟「Wagenhallen」や、2年前にイスラエルの初大会で優勝したシュトゥットガルトの建築事務所「Umschichten」とチームを組んで参加していました。

結果発表の翌日、シュトゥットガルト北駅周辺に建てられた10の作品を見学してきました。72時間しかなかったはずなのですが、計画から材料の購入、実際の建設にいたるまで、実に見事なプレゼンテーションとなっていました。

市民による大規模な反対運動で有名になった中央駅および周辺の都市改造計画シュトゥットガルト21については、皆さんもご存知ですよね。住民と計画運営側との間のコミュニケーション不足が問題になりました。今回のコンテストには、そのような同計画の進め方を批判する意味合いも含まれていたと考えられます。すなわち、近隣住民や一般市民の意見を最優先させ、適所に適切なものを作るという、シュトゥットガルト21とは異なるアプローチを取ったのです。

シュトゥットガルト
不要なものを置き、欲しいものを持ち帰ることができる
ギブ&テイクの棚

作品の中で一番印象に残ったのは、バス停に設置する、横にスライドできるベンチと、「ショートカット」と名付けられた棚。これは、その棚に要らなくなったものを置き、欲しいものがあれば持っていくことができるギブ&テイクの棚で、そこに入っているものをただ眺めるだけでも楽しめます。その他、Wagenhallen の広場には、参加者のために建てられたインスタント施設がありました。巨大なキッチンユニットや、40~50人が座って食事できるスペース、サウナ付きの屋外プールなどが整備されていて、なかなか面白かったです。

どれも実用性とデザイン、ユーモアをうまく融合させた作品ばかり。その中で見事グランプリに輝いたのは、住民たちの憩いの場として住宅地に作られたデッキとベンチです。木の丸さを活かしたデザインと若々しい色遣いが好評だったようです。

残念ながら、後日、市の視察が入り、公共空間には不適切と判断されたものについては、撤去される予定です。さらに今後、住民による投票も行われ、ここでもう一度ふるいにかけられます。最終的には、皆に受け入れられるものだけがずっとそこに残ることになるようです。すべての作品をご覧になりたい方は、お早めに!

Wagenhallenへの行き方:
U5、U6、U7のEckhardtshaldenweg駅で下車、徒歩5分

シュトゥットガルト
グランプリに輝いたデッキとベンチ「Toy Parking」

郭さん郭映南(かくえいなん)
中国生まれの日本国籍。東北芸術工科大学卒業後、シュトゥットガルト造形美術大学でアート写真の知識を深める。その後、台北、北海道、海南島と、渡り鳥のように北と南の島々を転々としながら写真を撮り続ける。
HP: http://kakueinan.wordpress.com/
 
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