ヴァイブリンゲンは、シュトゥットガルトの北東に位置する小さな町です。人口5万人程のこの町は、実は世界的にも有名なチェーンソーメーカー、スチールの生まれ故郷としても有名です。2008年にスチール財団(Eva Mayr-Stihl Stiftung)の出資によって、スチール・ヴァイブリンゲン・ギャラリーができました。スタイリッシュでモダンな建物の同ギャラリーは、紙のアートをテーマに作品を集め、展示をしてきました。今年は創立10周年を記念して、「Scharf geschnitten. Vom Scherensc hnitt zum Papercut」(4月22日まで展示中)という切り絵の大規模展示を開催していたので、さっそく行ってみました。
実は切り絵もこの土地には大きな縁があったそうです。18世紀終わりから19世紀始めにかけて、ここヴァイブリンゲン生まれのLuise Duttenhoferはシュトゥットガルトに住んでおり、この地域で有名な切り絵作家として名を馳せていました。
スタイリッシュなギャ ラリーの建物
今回の展示会ではLuise Duttenhoferが1800年に制作した作品から、現代アートまで、67作品が展示されていました。
展示会場に入ると、まず1817年に作られた切り絵の本が見えました。シルエットポートレートがたくさん見られるほか、さまざまな生活情景の絵もありました。西洋人の横顔は彫りが深いため、実に個性豊かに表現されています。ベッドに寝ている赤ちゃんの横顔も、ありありと細部まで細かく刻まれていました。
ギャラリーの入口
一方、現代アートのコーナーでは、鳥の羽のような立体ペーパーカットの作品、紙の代わりに木をカットして、大きな影絵として投影した作品、カラーの紙をカットして景色を作った作品と、媒体を紙に限らない豊かな表現が特徴です。中でも印象に残ったのが、壁と壁のパースを利用した巨大な切り絵の空間インスタレーション。壁二面と床に施された作品は、まさに作品の中に入っているような感覚になります。ほかにはペーパーカットが彫刻となって、成長しながら壁から飛び出してくるような作品や、ペーパーカットで作った絵をビデオアートにした作品もありました。
展示を通じて切り絵の200年の歴史を見事につないでいます。そこには同じテクニックを貫いた美意識の変遷と文化の歴史が感じられました。
スチール・ヴァイブリンゲン・ギャラリー:www.galerie-stihl-waiblingen.de
中国生まれの日本国籍。東北芸術工科大学卒業後、シュトゥットガルト造形美術大学でアート写真の知識を深める。その後、台北、北海道、海南島と、渡り鳥のように北と南の島々を転々としながら写真を撮り続ける。
www.kakueinan.wordpress.com