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女性が罹りやすい膀胱炎

涼しくなるこの時季になると、膀胱炎を起こしてしまいます。また、トイレを我慢すると膀胱炎になりやすいと聞きますが、なぜでしょうか?

Point

  • 女性が罹りやすい病気。
  • 尻付近の細菌が尿道から入るのが1つの要因。
  • 主症状は、頻尿、排尿痛、残尿感。
  • 治療には抗菌薬が有効です。
  • 予防の基本は「清潔に保つ」「トイレを我慢しない」。

膀胱炎とは

● 細菌による膀胱の炎症
尿道から侵入した細菌(Bakteria)が、膀胱(Harnblase)の壁に付いて増殖することで起こる急性炎症です。

● 起因菌は大腸菌
女性の急性の膀胱炎のほとんど(約80%)は大腸菌(E. Coli)によるものです。大腸菌は私たちの腸内に住む、通常は無害な細菌(腸内細菌)ですが、尿路系に入ると病原体に変わります。

● 女性の4人に1人が膀胱炎を経験
急性の膀胱炎の多くは、性的活動期にある女性に多くみられます。性交渉がきっかけで膀胱炎を起こすことも少なくありません。女性の20~25%に膀胱炎の経験があり、女性は人生のうちで1度は膀胱炎を経験するとも言われています。20~50歳代の女性にみられる尿路感染症の頻度は、男性の約50倍にも上ります。

● 膀胱炎を起こす要因
日常生活で細菌が尿道に入り込む機会はそれほど多くありません。しかし、衛生面が不十分だったり、過労、寝不足、ストレスで免疫力が低下しているとき、長時間トイレを我慢したとき、上述のように性交渉がきっかけで膀胱炎(単純性膀胱炎と呼ばれます)になることがあります。尿路系の基礎疾患に伴う膀胱炎は「複雑性膀胱炎」と呼ばれ、慢性となることもあります。

膀胱炎を起こす要因

なぜ女性に多いのか

女性の身体は、男性より尿道内に細菌が入り込みやすい構造になっています。

● 尿道が短い
女性の尿道(Harnröhre)は男性に比べて長さが3~4㎝と短く、しかも太くなっています。男性の尿道は16~20㎝で、女性より細くできています。

膀胱と尿道の関係

● 尿道が肛門に近い
女性は尿道の位置が肛門や膣に近く、尻付近のデリケートゾーン(会陰部)に付着した細菌が簡単に尿道を通って膀胱に侵入してしまいます。

● 男性は膀胱炎より尿道炎が多い
男性の尿道は、開口部が肛門から離れているため、細菌が入りにくい構造となっています。男性のペニスの先端部から尿道に細菌が侵入した場合は、まず尿道炎を起こします。ただし、男性が尿道炎を発症する大半の原因は、性交渉によって起こる性行為感染症(STI)です。

トイレを我慢すると……

● 膀胱は理想の培養器
排泄物である尿も、細菌が住むには適温で、栄養分が豊かな培養液のようなものです。

● 短時間で増殖
尿内に入った細菌は、1つの菌が2つに、2つの菌が4つにというように、指数関数的に増殖するため、トイレを長時間我慢するだけで、細菌は増えていってしまいます。

膀胱炎の症状と治療

● 頻尿、排尿痛、残尿感
膀胱の粘膜に炎症が生ずると、「頻繁にトイレに行きたくなる」「排尿時の痛み」「排尿したのに尿がまだ残っている感覚」「下腹部の不快感」といった症状が出ます。

膀胱炎の主な症状と所見

● 血尿が見られることも
「尿に血が混じる」「尿が濁る」ことがあります。尿の潜血(肉眼では見えない血液混入)や血尿(Hämaturie、肉眼で分かる)は、膀胱の粘膜が炎症によりただれた状態になっていることが原因です。

● 高熱や腹痛は腎盂腎炎の可能性も
膀胱炎が悪化すると、膀胱内の細菌が尿管を伝わって腎臓にまで達し、腎盂腎炎(Pyelonephritis)を起こすこともあります。膀胱炎の症状に続いて38℃近い高熱や、上腹部痛が左右どちらかにみられたら、この病気も疑います。

● 治療には抗菌薬
尿検査で細菌感染による急性膀胱炎と診断された場合の治療方法は、抗菌薬の投与です。通常は起因菌として最も多い大腸菌による感染を想定して抗菌薬を選びます。急性の単純性膀胱炎の場合、3日間程度の抗菌薬の内服で治ります。

尿検査で分かる膀胱炎

女性の膀胱炎の予防法

● 日常生活における注意
デリケートゾーンを清潔に保ち、十分な睡眠と水分摂取を心掛けます。膀胱炎を繰り返す人は、通気性の悪いタイツの着用は避けましょう。

膀胱炎の予防

● 性交渉時の留意点
デリケートゾーンの衛生状態はもちろんのこと、事前に手を洗うことも大切です。また、性交後は早めに排尿するようにしましょう。ペッサーリー(子宮内避妊器具)は膣内の常在菌を抑え、大腸菌など、ほかの細菌の力を増す可能性が指摘されています。膀胱炎に罹ったら、完治するまで性交渉は控えましょう。

● 街のトイレを把握しておく
トイレは我慢せず、頻繁に排尿することが大切です。小まめに排尿すれば膀胱内に細菌がとどまりません。家に戻るまでとか、会議が終わるまでなどとトイレを我慢している間に細菌が増えていってしまいます。街中の駅やデパートのトイレの位置を事前に調べておき、外出中などでもトイレを我慢しないようにしましょう。

膀胱炎を頻繁に繰り返す

● 基礎疾患の有無
尿路系の基礎疾患がある場合は複雑性膀胱炎と言われ、膀胱炎症状を繰り返すことが少なくありません。また、糖尿病患者は膀胱炎を起こしやすくなります。

● 感染のない膀胱炎
間質性膀胱炎(Interstitielle Zystitis)は中高年の女性に多くみられ、感染の形跡を伴わない膀胱の炎症です。症状には頻尿・尿意切迫感・痛みなどがあり、膀胱粘膜に点状の出血(ハンナー潰瘍)がみられます。原因は不明です。

 
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馬場恒春 内科医師、医学博士、元福島医大助教授。 ザビーネ夫人がノイゲバウア馬場内科クリニックを開設 (Oststraße 51, Tel. 0211-383756)、著者は同分院 (Prinzenallee 19) で診療。

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