ハンブルクから船出! クラフトビールの革命児
北ドイツの美しい港街、ハンブルク。中世後期には、欧州北部の経済圏を支配したハンザ同盟の主要な貿易港として多くの船が行き交った。船は街の繁栄と自由の象徴だ。現在でも、5月頭の週末に開催される「HafengeburtstagHamburg(港の生誕祭)」には世界各国から蒸気機関船や帆掛け船、最先端のクルーズ船が集まり、その数は300を超えるとか。
そんなハンブルクで今まさに「ビールの航路」を拡大しているのが、ブデルシップ醸造所だ。ブデルシップとは、ボトルの中に小型船を組み立てた工芸品。オーナーのジームスグリュス氏はハンブルクに生まれ、政治経済を学ぶために国外で暮らすなかでクラフトビールの面白さに気付いた。しかし、近年のハンブルクのビールは大手メーカーばかり。ハンザ同盟全盛期に「ビールの都」と呼ばれた栄光を取り戻そうと、同氏は国内外の醸造所で腕を磨いた後、缶詰め工場の跡地に自身の醸造所を設立した。
同社の自由で情熱的、革新的なビールは、世界のクラフトビール界にインパクトを与えている。国内外のビールイベントに参加したり、日本のヨロッコビール(神奈川県逗子市)とビールを造るなど、技術の交流にも積極的だ。
「Eisbrecher」は、ロシアのサンクトペテルブルクにあるバクーニン・ブルワリーとのコラボビール。バルト海の港は11月から4月の冬季には凍結してしまうが、厳寒期を除いて常に砕氷船(Eisbrecher)が2都市を結ぶ航路を維持している。
ビアスタイルは、インペリアルウィートスタウト。インペリアルスタウトは、英国でロシア皇帝への献上品として誕生し、寒冷地でも凍らないようアルコール度数を高めたもの。このビールは、それを小麦麦芽で造り上げたもので、コーヒーのような苦みと高アルコールの重厚感が特徴。砕氷船のように力強いビールだ。