欧州のみならず、今や世界中から注目を集めているベルリンのジャズシーン。ベルリンの音楽といえばテクノやクラシックが有名ですが、人種のるつぼであるベルリンはジャズも非常に盛んで、深夜にジャムセッションを行っているライブハウスは枚挙にいとまがないほどです。
XJAZZ! Festivalのポスターとくつろぐ人々
ベルリンのジャズシーンの盛り上がりを象徴するイベントが、「XJAZZ! Festival」です。クロイツベルク地区にて2014年から毎年5月上旬に行われていますが、昨年はコロナ禍によりオンラインでの開催を余儀なくされました。接触制限の緩和された今年は、久しぶりの有観客での開催となったのです。
ベルリンには1964年から続くJazzfest Berlinもありますが、 XJAZZ! Festivalは草の根活動で大きくなったイベントで、音楽性もより過激です。参加ミュージシャンの音楽性はジャズの枠にとらわれず、テクノ、フォーク、ファンク、アンビエントなどさまざま。世界的に名が知られたミュージシャンも、地元を中心に活動するミュージシャンも一同に会して、ベルリンらしい多様性に富んだフェルティバルを形作っています。
本番を待つ楽器たち
開催場所はクロイツベルク地区の四つのライブハウスのほか、教会や船上など、こちらもバラエティーに富んでいます。約1週間にわたり、80組以上のミュージシャンがこれらの会場で熱い演奏を繰り広げました。
筆者もチケットを購入して、新進気鋭の女性ギタリスト、Rosie Frater-Taylorの演奏を聴きに行ってきました。会場はFluxBauというシュプレー川沿いのライブハウスです。ベルリンのラジオ局FluxFMが所有しているこのライブハウスは、川沿いのテラスからテレビ塔を一望できる最高のロケーション! ライブが始まるまで、人々は飲み物片手にくつろいでいました。
そして始まる演奏。Rosie Frater-Taylorのギターのほかにはベース、ドラムのみのシンプルなトリオ編成でした。ポップな歌声と複雑なリズムワーク、独特なギターのアドリブは彼女の独壇場。それを支えるベース、ドラムの力量も抜群です。筆者は非常に近い距離で聴いていたのですが、音量のバランスやダイナミクスも適切で、本当に素晴らしいパフォーマンスでした。
テラスからテレビ塔を望む
集まった人々は、久しぶりの生演奏を聴ける喜びに自然と笑顔に。そう、やっぱりこの街には音楽が、そして生演奏がどうしても必要なのです。
XJAZZ! Festivalは音楽性の高さが評価され、ブレーメンで行われたDeutscher Jazz Preis 2022にてFestival des Jahresを受賞しました。草の根活動でスタートしたこの祭典は、今後ますます大きくなっていくことでしょう。