コロナ禍による中断を乗り越え、今年6月に4年ぶりの開催となったILA Berlin(ベルリン国際航空宇宙ショー)。「先駆的な航空宇宙」をモットーに、気候に中立な飛行、デジタル化、危機管理・防災、宇宙旅行など複数のテーマを掲げて開催され、6月25~26日の一般来場者向けのチケットは完売するなど、大きな関心を集めていました。
エアバスの最新鋭旅客機A350XWBと、翼の下で涼を取る人々
ベルリン・ブランデンブルク空港西側の会場では、世界29カ国から約550社が出展。全来場者数は合計7万2000人以上と発表されましたが、前回に比べるとかなり縮小されています(2018年は41カ国1100社、11万人を動員)。また今回のILAは、同空港が開港して初めての開催で、それに伴ってデモ飛行の回数が大幅に減少。デモ飛行を楽しみにしていた人々からは不満の声も聞かれました。
一般来場者チケットは、土曜日と日曜日にそれぞれ1万枚限定とされ、発売後早々に売り切れとなっていました。筆者が来場したのは26日(日)でしたが、当日は35度にも届きそうなほどの真夏日! 屋外展示場の暑さはかなりのもので、展示された飛行機の日陰に入って涼む人の姿も多く見られました。
米軍の対戦車ヘリコプターAH-64「アパッチ」とC-17輸送機
気候変動に関して航空業界が取り組んでいるのは、水素や電気を利用した新しい駆動技術です。エアバスなどの大メーカーやいくつもの大学、多くのベンチャー企業が、水素を利用した燃料電池や水素航空機、電動航空機などのコンセプトを発表。具体的なコンセプトモデルや原寸大模型の展示はごくわずかでしたが、現在の航空業界が一気にこちらに舵を取っていることが実感できました。
会場内には五つの講演スペースがあり、延べ360人の講演者が登壇。さまざまな航空宇宙の問題について討論しました。筆者が当日聞くことができたのは、宇宙に人間が進出・移住することについての話し合いと、ドイツ連邦軍による最新の安全保障、それを実現するための技術についての講演でした。
人類の宇宙進出についての講演。質疑応答も活発に行 われていました
ウクライナで戦争が行われている最中ということもあり、今回のILA Berlinは軍事色がかなり強めだったと言わざるを得ません。連邦軍への参加を若者に呼びかけるブースや、偵察のみならず攻撃まで行う軍用ドローン、対戦車ヘリコプターやC-17輸送機などを持ち込んだ米軍、最新鋭ステルス戦闘機F-35を地上展示したイタリア軍。航空技術の平和的な利用よりも、軍事利用の側面の方が目立っていたように思います。
1909年から100年以上の歴史を持つ、世界最古の航空ショーであるILA Berlin。戦争と気候変動対策という、世界の現状をダイレクトに反映した展示は、一日1万枚限定のチケット販売では足りず、もっと多くの一般来場者に見られるべきだと強く感じました。次回の開催は2024年6月5日(月)~9日(金)に予定されています。