新シーズンが始まったベルリンの音楽シーンで、いま一際注目を集めている指揮者がいます。ヨアナ・マルヴィッツ。現在36歳の彼女は、この2023/24年シーズンからベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団の首席指揮者を務めています。長い歴史を持つベルリンのプロオーケストラで女性がシェフになるのは史上初のことです。
コンツェルトハウスのシーズン開幕公演を指揮したヨアナ・マルヴィッツ
就任披露公演でマルヴィッツが指揮したのは、プロコフィエフ、ヴァイル、マーラーのいずれも交響曲第1番。新時代の「始まり」にふさわしい選曲といえるでしょう。その直後の9月3日、コンツェルトハウスのオープンデーの無料イベントが開催されたので足を運んでみました。
マルヴィッツは教師の両親のもと、1986年にヒルデスハイムで生まれました。5歳でピアノとヴァイオリンを始め、その才能を開花させます。2014年には27歳でエアフルト歌劇場の音楽総監督に就任(当時、欧州でも最年少の音楽監督でした)。2018年からはニュルンベルク歌劇場の音楽総監督を務め、翌年「オーパンヴェルト」誌の年間最優秀指揮者に選ばれるなど、評価を高めてきました。
大ホールでのコンサートにマルヴィッツが登場すると、舞台がぱっと明るくなったような気がしました。その指揮ぶりは華やかで躍動感に富み、視覚的にも惹き込まれます。終演後に行われた楽団インテンダントとのトークセッションでも、マルヴィッツはよどみなく自らを語り、卓越したコミュニケーション能力の音楽家という印象を受けました。
一流のオーケストラが林立するベルリンで、マルヴィッツとコンツェルトハウス管弦楽団は、新機軸を次々に打ち立てます。例えば、「エクスペディション(探検)・コンサート」ではマルヴィッツが司会も務め、指揮台から聴衆に向けて作品について語ります。また21時半開演の「ナイト・セッション」では、「必ずクラシック音楽以外のゲストを招いて、意見交換を行います。私の願いは、聴き手を、そして私自身をも刺激し、彼らがこれまであまり接する機会のなかった音楽との距離を縮めるような夕べにすること」(マルヴィッツ)とのことです。
新シーズンで、マルヴィッツはモーツァルトやベートーヴェン、ヴァイルなど多彩なシンフォニー・コンサートを含め、計36回もの公演を指揮する予定です。「ベルリンでの仕事は挑戦であると同時に、大きなインスピレーションの源」と語るマルヴィッツ。この新しいコンビネーションは、ベルリンの音楽シーンに新たな風をもたらしてくれるでしょう。
9月3日に行われたオープンデーのコンサートから