ジャパンダイジェスト

手仕事の温かさを感じる造園会社の陶器市

創立から300年以上の歴史を持ち、ベルリン最古の企業の一つともいわれるシュペーティッシェ・バウムシューレ。園芸のスペシャリストたちがあらゆる樹木や草花を育てながら、苗木販売や造園サポートなどを提供しています。その敷地はベルリン・フンボルト大学の生物学部によって、研究と教育の場としても活用されているとのことで、植物好きなら1度は訪れたい施設です。ここで年に一度開催されている大型陶器市を訪問しました。

歴史ある建物の前に並ぶ色とりどりの作品は、どれも見応えあり歴史ある建物の前に並ぶ色とりどりの作品は、どれも見応えあり

水路に沿って規則正しく植えられた樹木の育成地を通り抜け、色鮮やかな草花の苗木販売エリアを過ぎたところに、陶芸家の方々によるブースがずらりと立ち並んでいます。ベルリン内外から50組余りもの出展者が集い、個性豊かな作品を展示販売していました。例年通りであれば作陶体験も楽しめるそうですが、残念ながら今回は担当作家の方の体調が優れず急きょ中止でした。晴天に恵まれた野外で、植物にも陶器にも見ほれながらのんびり歩く時間は至福そのもの。あれこれと目移りしながらまずは1周して、ビアガーデンでの休憩を挟んだら、気になったブースへとまた戻る。そんな過ごし方がぴったりの、本当にすてきなロケーションでした。

生産者直売だからこそできるリーズナブルな苗木販売生産者直売だからこそできるリーズナブルな苗木販売

日常の食卓に似合いそうな、素朴だけれどセンスが光るテーブルウェアを探していたところ、インゲボルグ・ペープさんの作品を見た瞬間に「これだ!」と心をつかまれました。ベルリン郊外のクラードー地区にアトリエを構え、日々独自のデザインを探求していると語るペープさん。その作品は、パウル・クレーの油絵を思わせるような抽象的で温かな絵付けが特徴です。素朴感のなかに遊び心が感じられつつも、上品にまとめられたデザインに惹かれ、ボウルとカップを購入しました。年に数回ドイツ各地の陶器市に出展しながら、顧客からの直接受注を主体に活動されているとのこと。この日出会わなければこのすてきな作品を買えなかったかと思うと、喜びもひとしお。きっとほかのブースでも、陶器市ならではの幸福な出会いがたくさんあっただろうと思います。

一つひとつ表情が違うインゲボルグ・ペープさんの作品。お気に入りを選ぶのが楽しくも悩ましいです一つひとつ表情が違うインゲボルグ・ペープさんの作品。お気に入りを選ぶのが楽しくも悩ましいです

植物を育てるのも、陶器を作るのも、経験豊富な職人による手仕事には確かな魅力が宿っています。それを心から感じられる素晴らしいイベントでした。シュペーティッシェ・バウムシューレでは、ほかにも季節ごとにさまざまな催しが企画されています。機会があればぜひ訪れてみてください。

Späth’sche Baumschulen:www.spaethsche-baumschulen.de

 
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中村さん中村真人(なかむらまさと) 神奈川県横須賀市出身。早稲田大学第一文学部を卒業後、2000年よりベルリン在住。現在はフリーのライター。著書に『ベルリンガイドブック』(学研プラス)など。
ブログ「ベルリン中央駅」 http://berlinhbf.com
守屋健(もりやたけし)
ドイツの自動車、ビール、そして音楽に魅せられて、2017年に渡独。現在はベルリンに居を構えるライター。健康維持のために始めたノルディックウォーキングは、今ではすっかりメインの趣味に昇格し、日々森を歩き回っている。
守屋 亜衣(もりや あい)
2010年頃からドイツ各地でアーティスト活動を開始し、2017年にベルリンへ移住。ファインアート、グラフィックデザイン、陶磁器の金継ぎなど、領域を横断しながら表現を続けている。古いぬいぐるみが大好き。
www.aimoliya.com
佐藤 駿(さとう しゅん)
ドイツの大学へ進学を夢見て移住した、ベルリン在住のアラサー。サッカーとビールが好きな一児のパパです。地元岩手県奥州市を盛り上げるために活動中。
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