2年半かけて行われてきた旧東ドイツ時代の共和国宮殿の解体作業が終わりを迎えた昨年11月末、ベルリンの将来に関する大きな決定が下されました。共和国宮殿に代わって新たに建てられる「フンボルト・フォーラム」の建築コンペで、15人の審査員が全員一致でイタリア人建築家フランコ・ステラの作品を勝者に選出したのです。
プロイセン時代に端を発し、1950年に東ドイツ政府によって爆破されたベルリン王宮を再建すべきか否かは、この15年間、ベルリンのみならずドイツの将来に関わる中心議題であり続けました。しかし、王宮の復古という形ではなく「フンボルト・フォーラム」という名称の複合文化施設として再建を決定していた連邦政府は、これで2010年の着工に向け本格的に動き出すことになります。
現在、コンペに参加した30作品がウンター・デン・リンデンの皇太子宮殿(Kronprinzenpalais)に展示されているというので、先日見てきました。連邦建設省主催のこのコンペでは、バロック様式のファサード(正面)3面はオリジナルの外観を保つというのが条件。残りの東側のファサードと屋上のドーム、及び中庭のデザインは建築家に任されました。中には斬新で奇抜なデザインの作品もありましたが、ステラの建築はオリジナルの外観にかなり忠実に沿っていて、素人目にはやや殺風景にさえ感じられた東側の現代的な部分も、「建築家の自我が前面に押し出されることなく、バロック様式のリズムに沿って形成された」と評価されたようです。
フランコ・ステラの建築案(右)
「フンボルト・フォーラム」は、プロイセン文化財団が所有する非ヨーロッパの美術コレクション、ベルリン市図書館、フンボルト大学所蔵の学術コレクションという3つの核で成り立っており、その他、アゴラと呼ばれる残りのスペースはコンサートや映画上映、現代アートの展示、カフェ、レストランなどに利用されます。
東西再統一後、ベルリンは新しい未来を予感させる工事現場にその時々彩られてきました。例えば90年代のポツダム広場、2000年代に入ってからのベルリン中央駅などです。14年末に完成予定の「フンボルト・フォーラム」が、新たにその役割を担うことになるのは間違いないでしょう。
共和国宮殿最後の残骸