今年は、作家三島由紀夫の没後40年。この記念の年にあたり、ベルリンの日独センターがベルリン・ブランデンブルク学術アカデミーとベルリン自由大学との共催で、国際シンポジウム『MISHIMA! その国際的インパクトと複合文化的源泉』を開催しました(3月18~20日)。
初日は、日本文学者のドナルド・キーン氏、写真家の細江英公氏、作家の平野啓一郎氏、小説家のボリス・アクーニン氏ら多彩なゲストが自身と三島との関わりについて語り、その後、パネルディスカッションに移りました。「キーンさんや細江さんなど、三島と親交のあった方々が個人的なエピソードを披露し、三島という人に対して少し親近感が沸いた」とは、この日参加した一般の方の感想でした。
シンポジウム2日目の様子
私が足を運んだ2日目は、ベルリン自由大学に会場を移し、よりアカデミックな内容で進行しました。林道郎氏(上智大学)の「三島の残像:森村――ターンブル――ウォール」、Hong Yun Pyo氏(高麗大学校)の「韓国における三島由紀夫の受容」、イルメラ・日地谷=キルシュネライト氏(ベルリン自由大学)の「世界の文学のなかの三島」など、三島文学の多様性や世界に与えたインパクト(さらにその問題点も含め)に焦点が当てられ、「Mishima」が現在に至るまで、文学のみならず映画や戯曲、オペラ、美術など様々な分野で人々を刺激し続けていることがわかりました。話の内容はところどころ難解でしたが、平野啓一郎さんがツイッター上で、「14歳の時にこれを読んでいなかったら、おそらく違った人生になっていたはず」と語っていた『金閣寺』を含め、この機会に改めて三島作品を読んでみたいと思いました。
余談になりますが、休憩時間中にドナルド・キーンさんと少しだけお話しすることができました。ベルリンに来られるのは3度目とのことで、最初の訪問は何と1931年、9歳の時だったとか!貿易商だった父親に頼み込んで、ヨーロッパ周遊のお供をさせてもらったのだそうです。「アメリカは国土が広く、それ自体が多様でしょう。周りの人は『なぜわざわざ外国に行って外国語を勉強する必要があるのだ』と反対しましたが、私はどうしても外国で同世代の子どもたちとコミュニケーションを図りたかったのです」。2年前に文化勲章を授章された現在87歳のキーンさんですが、熱く語るその姿に異文化への好奇心の原点を見る思いがしました。
「三島とラシーヌ」というテーマで講演をした
ドナルド・キーン氏