ジャパンダイジェスト

地下鉄U5の過去と未来

先頃、アレクサンダー広場から東に延びる地下鉄U5が開業から80年を迎え、特別列車が走りました。1930年12月21日、アレクサンダー広場とフリードリヒスフェルデ間が開業した地下鉄U5(当初は路線E)は、当時ベルリンで最速の地下鉄だったそうです。東ドイツ時代の1970~80年代、新興住宅地の開発に合わせてヘーノウ(Hönow)まで延長されました。現在は全長18.4kmの路線です。

昨年12月19日の午後、アレクサンダー広場の地下ホームに行ってみると、日頃見慣れないオールドタイプの2両編成の列車が停まっていました。この路線の開業当時に造られた戦前の車両で、1両は黄色、もう1両は赤色という珍しいものでした。無料の整理券をもらって中に入ると、車内はすでに家族連れや鉄道ファンで一杯。思ったよりも広々としており、木の内装ならではのぬくもりが感じられます。うなるようなエンジン音に導かれて電車が走り出すと、お客さんはどこかそわそわと落ち着かない様子で、写真撮影をしたり、物珍しそうに車内を行き来したりしていました。当時は地下鉄にまで喫煙車があったことには驚きました。

ベルリン
1929年に製造された地下鉄は保存状態も良く、
木製の内装がどこか郷愁を誘う

途中駅を通過する度に、ホームで待っている乗客が時々「あっ」という表情をしてこちらを眺めています。列車はフリードリヒスフェルデ駅の車両工場に到着し、再びアレクサンダー広場駅に戻ってきました。1時間弱のノスタルジック・ジャーニーを楽しみました。

さて、ここからは未来のお話。このU5がこれから西へ拡張されることをご存知でしょうか。昨年4月、ヴォーヴェライト市長同席の下、赤の市庁舎前でU5の着工式が行われました。現在、市庁舎前には広いスペースにわたって柵が張り巡らされており、小さな展望台も設置されています。この先の公園にあった社会主義思想家のマルクスとエンゲルスの大きな像も、これから始まる工事のため、すでに別の場所に移転。予定では、赤の市庁舎駅が2014年頃に開業した後、博物館島駅、ウンター・デン・リンデン駅を経由して、17年頃にはブランデンブルク門駅まで結ばれることになります。そこで一足先に開業したU55と手をつなぎ、アレクサンダー広場駅から中央駅までが1本の路線で結ばれることになるわけです。

記念列車を降りた後、赤の市庁舎前の展望台に上ってみました。ベルリンの未来図が何か見えるかなと思いきや、一面雪で真っ白に覆われていて、結局、何も判別できませんでした。

ベルリン
赤の市庁舎前のU5の工事現場と展望台

 
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中村さん中村真人(なかむらまさと) 神奈川県横須賀市出身。早稲田大学第一文学部を卒業後、2000年よりベルリン在住。現在はフリーのライター。著書に『ベルリンガイドブック』(学研プラス)など。
ブログ「ベルリン中央駅」 http://berlinhbf.com
守屋健(もりやたけし)
ドイツの自動車、ビール、そして音楽に魅せられて、2017年に渡独。現在はベルリンに居を構えるライター。健康維持のために始めたノルディックウォーキングは、今ではすっかりメインの趣味に昇格し、日々森を歩き回っている。
守屋 亜衣(もりや あい)
2010年頃からドイツ各地でアーティスト活動を開始し、2017年にベルリンへ移住。ファインアート、グラフィックデザイン、陶磁器の金継ぎなど、領域を横断しながら表現を続けている。古いぬいぐるみが大好き。
www.aimoliya.com
佐藤 駿(さとう しゅん)
ドイツの大学へ進学を夢見て移住した、ベルリン在住のアラサー。サッカーとビールが好きな一児のパパです。地元岩手県奥州市を盛り上げるために活動中。
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