天気の良いある日、クロイツベルクを散歩していたら、通りの半地下にちょっと気になるお店を見付けました。その名も『ゼンフ・ザローン(Senf Salon)』。「ゼンフ」とは、ソーセージ などに付けて食べるお馴染みのマスタードのこと。名前に惹かれて階段を下りていくと、そこには黄色のラベルが貼られたマスタードの瓶がぎっしりと並ん でいました。驚いたのは、一言でマスタードと言ってもその種類が半端ではないことです。はちみつ入り、しょうが入り、なんとバナナ入りまで。何種類か試食 させてもらうとどれも美味しく、後日オーナーのシャンバッハさんに改めて話を聞かせていただくことにしました。
『 ゼンフ・ザローン』の創業者、エネルギッシュな
シャンバッハ夫妻
シャンバッハ夫妻はブランデンブル ク州出身。夫のクリストフさんは作曲家、 夫人のメーリットさんは写真家という芸術家カップルです。10年近く前、彼ら に創業のヒントを与えたのは有名な子ども番組だったそう。「ある日、『マウス といっしょ』を見ていたら、マスタードにちょっと風変わりな材料を混ぜるということをやっていました。中にはバナナを混ぜたものまであって、私たちはびっくりしたのですが、出演者は『マスタードには何を混ぜても美味しい』と言って いる。2人とも料理好きなので、興味を引かれて自分たちでもいろいろ試してみたら、すっかりはまったというわけで す。友人たちにも食べさせてみると評判が良く、『次はどんなものを作って持ってくるのか』と向こうも期待し、そうこうする内に、しょっちゅうバーベキュー に呼ばれるようになりました(笑)」。
2003年10月、折しもドイツ政府が 失業者対策として導入したばかりの Ich-AG(自分株式会社)という制度を使って、2人は『ゼンフ・ザローン』を創業します。当初は副業として始めたそう ですが、アイデアの面白さと美味しさからメディアの注目を集め、旧東独出身の カップルがIch-AGで成功した例として知られるようになりました。現在、その製品はドイツ中のお店で扱われ、各国の旅行ガイドブックでも紹介されているとか。
約35種類あるというマスタードの中から、クリストフさんお勧めのものをいくつか紹介してもらいました。フルーティー で特にチーズとよく合う「洋梨マスター ド(Birnensenf)」、ニンニクと辛さが食欲をそそる「メキシコ風マスタード」、バ ニラアイスやチョコレートにも合うという「オリエント風マスタード」などなど。
地下鉄メーリングダム駅から徒歩5分、クロイツベルクの
ハーゲルベルガー通りにある店舗
「マスタードは3000年以上の歴史が ある奥深い調味料で、肉、魚、チーズ など何にでも合います。まずはいろいろ 試食してみてください」と語るクリストフさん。ゼンフ・ザローンでは、マスタードだけでなく自家製のジャムも作っており、こちらも美味でした。
Senf Salon
Hagelberger Str. 46, 10965 Berlin
営業時間:月~金11:00~18:00、土~15:00
www.senfsalon.de