1年に一度だけ、アウトバーンを自転車で走ることのできる日があるのをご存知でしょうか? 今回は、その名も「シュテルンファールト(Sternfahrt = 星の走行)」という自転車デモをレポートしたいと思います。どうして「星」なのかというと、いくつもの地点から自転車が1つの目的地に向かって走る様を星の輝きに見立ててのこと。今年で35回目を迎え、ベルリンの伝統行事にも数えられるイベントに、私は今回初めて参加してきました。
アウトバーンAVUSを走るサイクリストの群れ
6月第1日曜日の10時15分、スタート地点の1つ、ブンデスプラッツ駅に向かうと、4車線の片側2面がすでに自転車で埋め尽くされていました。警察の白バイに守られ、広々とした車道を自転車で走るのは何とも気分が良いものです。自転車専用道が隈なく整備されているドイツでも、車と比べるとどうしても立場上弱いのが自転車。このシュテルンファールトは車中心社会に意義を唱え、サイクリストがより自由に走れる社会の実現を願って1977年に西ベルリンで始まりました。自転車の行列が車道を走る間、当然車は通行止めになるため、当初は露骨に攻撃的な態度を取るドライバーも少なくなかったとは、主催する全ドイツ自転車クラブの方の話。しかし、シュテルンファールトの規模が年々拡大し、社会的な認知度も高まった今、そういう場面はほとんど見られなくなりました。今年は例年より参加者の数が少なかったものの、それでも15万人。この行事は、今やほかの都市にも波及しています。
そのような背景から、政治色の強いイベントを想像していましたが、反原発ポスターや沿道で配られる緑の党の風船を自転車に括り付けて走っている人を時折見かけたものの、周りは近所に買い物に出掛ける感覚で参加しているおばさんから大勢の家族連れまで、和気あいあいとしたムードが漂っていたのが印象的でした。タンデムと呼ばれる2人乗りから本格的なロードサイクルまで、色とりどりの自転車を眺めるのも楽しかったです。
とはいえ、スタートからゴールを目指すとしたら、それ相応の距離を走ります。のんびりしていると、最後尾の白バイを追いかけることにもなるので、飲み物や簡単な食料の持参は必須。途中で調達しようなどとは思わない方が良いというのが、今回得た教訓でした。
やはりハイライトは、終盤AVUSと呼ばれるアウトバーンを走ること。いくつものコースがここで合流し、一直線の道路がサイクリストでごった返す光景は壮観でした。4時間掛けて約40キロを走り終え、ゴール地点の戦勝記念塔が視界に入って来た時は、嬉しさと同時に達成感が込み上げてきました。ここからブランデンブルク門にかけては、環境フェスティバルの屋台が多く並び、私はオーガニックのビールで一息。こんなに楽しいデモに参加したのは初めてかもしれません。