ジャパンダイジェスト

ベルリンマラソン 「伝説」の日本人ランナー

9月25日、毎年恒例のベルリンマラソンが開催されました。今年43回目を迎える世界最大規模のマラソン大会に、16年連続の完走を目指して走った日本人ランナーがいます

京都在住の水戸孝彦さん(72歳)。通信業に携わる水戸さんが初めて旅行でドイツを訪れたのは1999 年のこと。そのときベルリンの現地ガイドだったノリス恵美さんと、帰国後に手紙のやり取りをするなどの交流が生まれました。たまたまノリスさんを通じてベルリンマラソンの存在を知った水戸さんは、2001年、57歳にしてベルリンで初のフルマラソンに挑戦。約4時間20分で完走を果たしました。

水戸孝彦さん
ベルリンマラソンの22キロメートル付近を走る水戸孝彦さん

走ることの面白さに目覚めた水戸さんは、翌年から会社の同僚の酒田文司さん(66歳)を誘って毎年一緒にベルリンを走ることになり、やがて2人の熱に感化されたノリスさんもベルリンマラソンに参加。日本から応援に来る彼らの家族と共に過ごすことが毎年の恒例行事になってゆきます。

本番2日前、ノリスさん宅で行われた夕食会にお邪魔し、水戸さんに話を伺いました。「親の介護や身内の不幸などで、『今年は無理やな』と思う年もあったのですが、不思議とここまで走り続けることができました」。

2012年、そんな水戸さんに一つの栄誉が贈られます。ベルリンマラソンを10回以上完走したランナーだけで構成される特別なJubilee-Clubに日本人で初めて入会を認められたのです。通常参加と違い、このクラブに入ると毎回固有のゼッケンナンバーで走ることができます。ちなみに、15年連続参加の酒田さん、過去に10回完走したノリスさんもその後Jubilee-Clubのメンバーに(現在、約4500人のこのクラブの中で日本人はわずか5人ほどだとか)。

水戸さんにベルリンマラソンの魅力を聞いてみました。「いつも30キロメートルを超えると、『毎年なんでこんな遠いところまで来て苦労するのやろ』と思うけれども、その晩の打ち上げで苦しかったことはすべて忘れてしまう。沿道の雰囲気は最高。あの声援のためにベルリンに来ているところがありますね。最後ウンター・デン・リンデンの向こうにブランデンブルク門が見えると、心の中は歓喜で満たされます」。

本番当日、22キロメートル地点で待っていると、忍者姿の水戸さんが元気な姿で現われました。もともと日本人の参加者がそれほど多くないベルリンマラソン。「見つけやすいように目立つ格好をして」と家族から言われた水戸さんが、関西人のノリでこの衣装を着るようになり、沿道からは「サムライ! 」「ニンジャ! 」の掛け声が飛ぶこともあるとか。水戸さんの存在はいつしか日本人ランナーの間でも知られ、「伝説の水戸さんですね? 」と声を掛けられる機会も出てきました。

この日、水戸さんと酒田さんは共に6時間代前半のタイムで見事完走。水戸さんは膝の問題もあり、マラソンの参加は今回を最後と決意したそうですが、マラソンを通して人の輪が広がったベルリンは、「ああ、またここに帰ってきた」と思える場所になったそうです。来春は10歳の孫を連れてベルリンに来るのを楽しみにしており、「レジェンド」の夢はまだ続きます。

 
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中村さん中村真人(なかむらまさと) 神奈川県横須賀市出身。早稲田大学第一文学部を卒業後、2000年よりベルリン在住。現在はフリーのライター。著書に『ベルリンガイドブック』(学研プラス)など。
ブログ「ベルリン中央駅」 http://berlinhbf.com
守屋健(もりやたけし)
ドイツの自動車、ビール、そして音楽に魅せられて、2017年に渡独。現在はベルリンに居を構えるライター。健康維持のために始めたノルディックウォーキングは、今ではすっかりメインの趣味に昇格し、日々森を歩き回っている。
守屋 亜衣(もりや あい)
2010年頃からドイツ各地でアーティスト活動を開始し、2017年にベルリンへ移住。ファインアート、グラフィックデザイン、陶磁器の金継ぎなど、領域を横断しながら表現を続けている。古いぬいぐるみが大好き。
www.aimoliya.com
佐藤 駿(さとう しゅん)
ドイツの大学へ進学を夢見て移住した、ベルリン在住のアラサー。サッカーとビールが好きな一児のパパです。地元岩手県奥州市を盛り上げるために活動中。
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