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アルトマルクト・ギャラリーにお目見えした日本庭園

早々と春の到来を告げるような、趣向を凝らした6畳ほどの大きさの8つの花壇が、ドレスデンの中で最も集客率が高いと言われるショッピングモール「アルトマルクト・ギャラリー(Altmarkt-Galerie)」の広い通路にお目見えしました。これは、「装飾的、芸術的、革新的」であることが求められる春の植栽コンペ「FloraDesign」の受賞作品のお披露目展示。同コンペの開催は今年で6回目を迎え、1月31日~2月16日まで、その華やかな受賞作品が買い物客たちの携帯カメラの格好の被写体となっていました。このコンペは毎年、連邦政府が音頭をとる都市や町単位の緑化コンペ「Entente Florale」へのエントリーという位置付けで開かれているもので、昨年ドレスデンは金メダルを受賞しました。

庭園
ショッピングモールの広い通路に配置された庭園

今回のFloraDesignのサブタイトルは「空に向かって――文明社会のくぼみで花咲く」。受賞作品の手前に展示されていた世界各国のレポートは大変興味深いものでした。過密都市内部における緑化運動はすでに定着していますが、銀座のビル屋上での養蜂、東京やニューヨークの屋上菜園、パリの緑の室内壁などが紹介されていました。

さて、アルトマルクト・ギャラリー内に実際に作られた庭のテーマは、パリ、ベルリン、東京、ニューヨーク、ロンドン、アムステルダム、ドレスデン。受賞者であるガーデンデザイナーや造園業者によって構成される各都市担当のチームが手掛けました。そのうち、2つも庭が作られたのは東京だけでした。竹垣や笹、つくばい、手ちょうずばち水鉢、柄ひしゃく杓、龍のひげ……どれも日本庭園にはお馴染みのアイテムなのですが、どうも何かが違います。竹垣の縄掛けや竹の合わせ具合はこうではないはず、笹や龍のひげや花がまるで野菜畑のように規則正しく並ぶ手水鉢……それらすべてをひっくるめて、日本人としては違和感を覚えてしまいます。しかも、キャベツとネギまで配置されているではありませんか! 担当したドイツ人のガーデンデザイナーによる、屋上菜園と庭園を組み合わせたアイデアだと思いますが、この思考は外国人による日本食の解釈と、その後に展開し、定着した「海外の日本食」の二の舞になる危険性も孕んでいるのではないかと思いました。

折り鶴やキャベツ
竹や笹など日本的なアイテムが並びますが、大きな折り紙の鶴とキャベツも

 

感覚とは、その土地に生まれ育って自然に培われ、身に付くものであり、普段はほとんど意識しません。しかし、「カステラ」しかり、舶来モノが伝わった地で独自に発展し、「伝統」として根付いている例も多いので、文化や習慣の行き来は、大らかな目で見た方が良いのかもしれませんね。

福田陽子さん福田陽子
横浜出身。2005年からドレスデン在住。ドイツ人建築家の夫と娘と4人暮らしの建築ジャーナリスト。好奇心が向くままブログ「monster studio」公開中。
http://yoyodiary.blog.shinobi.jp/
 
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