ジャパンダイジェスト

市立図書館でアクションアート

シュトゥットガルト市立図書館が中央駅の近くに引っ越してきたのは2011年。筆者はそれまでの市立図書館をしばしば利用したことがあり、よく知っていますが、もともとは美術館やオペラハウスなど文化的な施設が集まっている界隈にあり、その歴史的な建物は古き良き時代の面影がうかがえるような、とても落ち着く雰囲気のある図書館でした。

しかし、新しくなった図書館は、以前のそのイメージが180度変わり、一気にハイテクでモダンなものになりました。建物は打ちっぱなしコンクリートの立方体で、外見は至ってシンプル。地味な印象すらありますが、それでいて、建物内はすごい展開! 実は4階から8階まで中央部には大きな吹き抜けがあり、この吹き抜けでつながった5階層の空間を回廊から一気に眺めることができます。天井も床も本棚も階段もすべて白一色。建物と本棚やソファなどの内装が開放感とスケール感を演出する空間構成になっていて、天井から明るい光が降り注ぎ、SF映画の中に出てきそうな未来的な空間がそこにあります。

シュトゥットガルト市立図書館
右に建つのが図書館。左隣がショッピングモール「ミラネオ」

シュトゥットガルト市立図書館
図書館内部の吹き抜けの空間。写真愛好家の間ではかなりの人気スポット

開館当時から、蔵書の少なさや設備の使い勝手の悪さに批判が出ていましたが、それから5年、いろいろな改善を経て、シュトゥットガルトの人たちの間になんとか定着してきました。ところが2014年10月、市立図書館のすぐ隣に、南ドイツ最大規模の大型ショッピングモール兼商業施設の「ミラネオ」が作られ、再び物議を醸しました。

そんな折、今年の5月25日にはシュトゥットガルト芸術アカデミーの学生がアクションを起こしました。市立図書館の壁に、「I’M WITH STUPID(お隣のバカ)」と白地に黒い大きな文字で書かれた巨大バナーが掲げられ、大きな矢印がミラネオの方向をしっかりと指していました。バナーは20m×20mという巨大さもあって、通りかかる人たちから見落とされることはまず無いでしょう。そして、学生たちが掲げたこのバナーには、大型ショッピングモールであるミラネオに象徴される、現代の大量消費型資本主義に対する批判のメッセージが皮肉として含まれています。

このアクションの写真とビデオを、インターネットでいち早くオンラインにアップしたシュトゥットガルトのブログ「Kessel.TV」のFacebook ページには、わずか1時間の間に1000近くの「いいね!」が押されていたそうです。このメッセージに共感する人の多さと、町の人々の関心の高さがうかがえます。このアクションアートを制作したアーティストは、買い物客をばかにするつもりはなく、「あくまで資本主義のおかしなところを指摘している」のだと言います。また、アクション自体は一瞬で終了してしまいましたが、インターネットなどの画像が永遠に残り、自分たちのアクションも受け継がれていくだろうとも話していました。

郭 映南
中国生まれの日本国籍。東北芸術工科大学卒業後、シュトゥットガルト造形美術大学でアート写真の知識を深める。その後、台北、北海道、海南島と、渡り鳥のように北と南の島々を転々としながら写真を撮り続ける。
www.kakueinan.wordpress.com
 
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