日本の学校の授業で、また友達との遊びの中で、けん玉をした記憶がありませんか。けん玉といえば日本の代表的な遊びの一つで、時間や場所を気にせず手軽に遊べる玩具です。その懐かしいけん玉に、エルベ川沿いの芝生で再会することができました。
左から、ロバートさん(29)、バスティさん(27)、ヨナスさん(23)、トムさん(23)
ザクセン選帝侯アウグスト強王が、自慢の磁器コレクションを展示するために、当時の流行であった東洋趣味に改築させた日本宮殿。今は民族学展示室として使用されているその宮殿とエルベ川の間には、芝生の庭が広がります。普段人々が憩うこの場所で、一心にけん玉に興じる20代の若者達がいました。彼らのけん玉歴はさまざまです。中でも23歳のトムさんはけん玉を始めて5年で、高度な技をたくさん見せてくれました。けん玉を知ったのは友人を通してであり、シンプルな木の玩具からさまざまな技を繰り出せる楽しみに魅了されたのだとか。自分で模様付けしたマイけん玉を見せてくれました。友人のヨナスさんは足を怪我して好きなスポーツができなくなった時に、手の筋肉を使ってできるけん玉に出会い、体の動きや集中力を意識させるその奥深さに夢中になったそうです。
実はドイツのお隣フランスでは、ビル・ボケというけん玉の原型のような遊びが既に16世紀に流行しており、町の子供から王様まで遊んでいました。現在のけん玉は、大正時代に登場した「日月ボール」に由来するといわれ、それ以降日本の国民的遊びとして一つの文化を築いてきました。
トムさん達は友人と声をかけ合い、週に1度は集まってけん玉を楽しんでいます。落としても壊れる心配がない芝生の上で、軽快な音楽をかけ、流行のファッションに身を包み、カラフルなけん玉を操る若者。今までとは違ったけん玉スタイルです。
日本宮殿をバックにけん玉を楽しむ若者達
ここ十年で世界的に広く知られるようになったけん玉ですが、まだまだ知名度が低いドレスデンでは、町中でよく「それは何?」と尋ねられるそうです。声をかけられる度、トムさん達はけん玉の遊び方や歴史を伝え、けん玉への興味が広がってほしいと願っています。多くの人々と気持ちを共有して楽しめるよう、現在スポンサーを募り、団体を組織して定期的なけん玉の大会を開けるように活動しているとのこと。この先けん玉ブームがどう広がっていくのか、非常に楽しみです。
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東京都出身。ドイツ、西洋美術への関心と現在も続く職人の放浪修行(Walz ヴァルツ)に衝撃を受け、2009年に渡独。ドレスデン工科大学美術史科在籍。