世界で有名なドイツのB級グルメといえば、ケチャップとカレー粉がたっぷりのったソーセージ、カリーヴルスト。多くの人が一度は食べたことがあるのではないでしょうか。ドイツ各地で見かけるカリーヴルストですが、ここドレスデンでは新たなスタイルに挑戦するお店が、人気を呼んでいます。
ドレスデンでカフェやバー、ビストロが多く点在し、若者が集まるノイシュタット地区(Äußere Neustadt)。その中でひと際にぎやかなルイーゼ通り沿いに、有名なカリーヴルスト店Curry&Coはあります。ポップな看板に、大きなガラス窓から見えるさっぱりとした内装で、気軽に店内へと誘われます。置かれているメニューはいたってシンプルで、ヴルスト(ソーセージ)とポメス(フライドポテト)のみ。どこにでもありそうですが、ほかの店と違うのは、ヴルストとポメスにかける数種類のソースがすべてオリジナルレシピで作られているところなのです。濃厚なものからさっぱりしたものまで、自分の好みに合わせて選ぶことができます。
ヴィーガンヴルストに野菜フライ、ヴィーガンマヨネーズをつけて
さらに、近年ドイツで増えている菜食主義や多文化共生の食に対する意識の高まりに呼応して、セイタン (グルテンミート)を使用した非動物性ヴィーガンヴルストもメニューに並び、フライドポテトに欠かせないマヨネーズも、卵を使わないヴィーガン向けが選べます。フライドポテトの代替として、人参やパースニップの野菜フライも登場。組み合わせを選べる楽しさを味わえるようになっています。
賑やかな通りでも目立つポップなCurry&Co看板
今やドイツを代表するカリーヴルストですが、その誕生については諸説あり、正確には分かっていません。ベルリンにあるカリーヴルスト博物館によれば、戦後間もない頃、ベルリンでソーセージ屋台を営んでいた女性ヘルタ・ホイヴァーさんが、退屈しのぎにその場にあったウスターソースやトマトピューレ、カレー粉を混ぜ、ソーセージにかけてみたところその抜群の相性に驚いたことがきっかけだったそうです。お店で出したところ大評判となり、それ以来カリーヴルストはドイツ屋台食の定番になりました。ちなみに、ホイヴァーさんはこの特別ソースを「Chillup」という名前で1958年に特許を取得しています。
多彩な文化が共存する今日、ドイツらしいカリーヴルストにもさまざまな食べ方がでてきたのはごく自然なことなのかもしれません。一人ひとりが食べ方を楽しめる工夫は、今後も食文化交流の潤滑油となっていくことでしょう。
Curry&Co: www.curryundco.com
東京都出身。ドイツ、西洋美術への関心と現在も続く職人の放浪修行(Walz ヴァルツ)に衝撃を受け、2009年に渡独。ドレスデン工科大学美術史科在籍。