hr交響楽団(Frankfurt Radio Symphony)は、1929年に創立したヘッセン放送協会所属のオーケストラ。フランクフルトの旧オペラ座を拠点に、ほぼ毎週異なるプログラムでコンサートを行っています。古典音楽から現代音楽まで、多種多様な幅広い演目で質の高い演奏に定評があります。
hr交響楽団の拠点である旧オペラ座
世界各国の演奏家が所属するオーケストラですが、2020年4月に入団された日本人バイオリニスト河西絢子(かさいあやこ)さんにお話を伺うことができました。日本のNHK交響楽団のアカデミーに3年間研修生として所属していた河西さんは、欧州のオーケストラに挑戦したいと2019年に渡欧。契約団員となったエッセンフィルで、欧州でのキャリアをスタートさせました。そして以前からhr交響楽団の演奏を聴き感銘を受けていたそうで、ぜひこの楽団で演奏したいと正団員のオーディションに挑戦。これまでのオーケストラでの演奏経験を活かし、たくさんの応募の中から狭き門を突破し、見事正団員の座を勝ち取りました。
hr響の魅力は、何といってもその「攻め」の演奏にあるのだとか。「各自の音楽に対する熱い思いでギリギリを攻める演奏をしながらも、オーケストラとしての一体感を失わず、重厚で迫力ある一つの音楽を生み出しています」と河西さん。合わせようとすると守りに入りがちな演奏ですが、各自の高い演奏技術を余すことなく発揮し、お互いの音をぶつけ合い、全体として生き生きと躍動感ある音楽を作り上げているのです。
音のぶつかりと一体感が素晴らしいコンサートでした
私も旧オペラで開催されたコンサートに行きましたが、河西さんの言葉通り、その力強くダイナミックな演奏に心震える感動を覚えました。実は、hr響はユーチューブチャンネルも充実していることで有名で、演奏を自宅でも何度も聴いていました。しかし目の前で生の演奏を聞くと、そのパワーと迫力に圧倒されます。緩急織り交ぜた繊細かつ大胆な音の広がり、各演奏者の存在感と一体感は格別です。豊かで美しく力強い音楽に心も満たされ、その時その場でしか味わえない素晴らしい体験となりました。
日本人バイオリニストの河西絢子さん
旧オペラでのオーケストラのコンサートというと敷居が高いように感じますが、誰でも気軽に質の高い演奏を聴くことができます。私も以前は、歌劇場で音楽鑑賞なんてと気後れしていましたが、一度行ってみたら、生演奏ならではの特別な音楽体験にはまってしまいました。せっかく音楽の本場ドイツに住んでいるのなら、皆さんにもぜひフランクフルトが誇るhr交響楽団の演奏を、生で聴いてほしいと思います。
2003年秋より、わずか2週間の準備期間を経てドイツ生活開始。縁もゆかりもなかったこの土地で、持ち前の好奇心と身長150cmの短身を生かし、フットワークも軽くいろんなことに挑戦中。夢は日独仏英ポリグロット。 Twittter : @nikonikokujila