ジャパンダイジェスト

世界自然遺産「メッセル・ピット」

フランクフルトの南東約35kmの場所に、ユネスコの世界遺産に指定されている「メッセル・ピット化石発掘地域」があります。ここはドイツ初の世界自然遺産であり、ドイツ単独のものとしては唯一の自然遺産です。

世界遺産と言うと、観光客で賑わっているというイメージがありますが、鉄柵で囲まれたメッセル・ピットは、まるで大規模な工事現場のようです。昔からここで化石が採れることは知られていましたが、1960年代後半までは、オイルシェールと呼ばれる岩石の採掘場として利用されてきたそう。そのため、地表の岩石は大量に採取され、さらに71年にはここに産業廃棄物処理場を建設する計画まで持ち上がりました。しかし、この場所の重要性を知る科学者や化石愛好家、地元住民による熱心な反対運動の結果、公的に保護されるようになり、95年にユネスコの世界自然遺産に指定されました。反対運動がなければ、ゴミで埋もれていたはずの世界遺産なのです。

多様な化石が良質な状態で現存する発掘場
多様な化石が良質な状態で現存する発掘場

ビジターセンターでは、こうしたメッセル・ピットの歴史や地層を、映像や実際のサンプルを通して分かりやすく展示しています。3億年以上も前の火山の爆発でできたクレーターが、やがて火山湖になり、100年で1cmという速度で沈殿物が堆積して現在のメッセル・ピットが形成されました。約4700万年前の始新世と呼ばれる時代の地層を含み、ほ乳類が繁栄したこの時代の重要な化石が大量に残っています。酸素の少ないオイルシェールが化石の腐敗を防ぐため、全身の骨格や軟骨組織、皮ふや毛、胃の内容物までが残る化石も発見されており、化石の多様性と保存状態の良さは、ほかに類を見ないほどだとか。発掘された化石は、ダルムシュタットやメッセル博物館のほか、フランクフルトの自然史博物館にも展示されています。

現在は立ち入りが制限されている発掘場のガイドツアーにも参加しました。ガイドの指示に従い、地層上部のオイルシェールに触れると、ポロポロと鱗のようにもろく剥がれ落ち、オイルの匂いがします。また、指定された場所で化石を探すと、植物の化石が見付かりました。これほど簡単に化石が見付かることに驚いたと同時に、それだけ多くの化石が残る貴重な場所なのだと実感しました。

発掘場内のオイルシェールには、今も多くの化石が残っています
発掘場内のオイルシェールには、今も多くの化石が残っています

4700万年も前に生きていた動物や生息した植物が、毛や色素まで残して化石となり、現存するなど、考えるだけで不思議な気分になります。そして、そのような化石が今なお数多く発掘されるメッセル・ピットは、知る人ぞ知る重要な自然遺産なのです。

世界遺産メッセル・ピット
www.grube-messel.de

ユゴ さや香
2003年秋より、わずか2週間の準備期間を経てドイツ生活開始。縁もゆかりもなかったこの土地で、持ち前の好奇心と身長150cmの短身を生かし、フットワークも軽くいろんなことに挑戦中。夢は日独仏英ポリグロット。
 
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