ハンブルク北東に隣接するアーレンスブルクという街に、ペーター・ランツァウ・ハウスという市民センターがあります。そこでは年に4回、地域の芸術家の個展が開催されていて、今年7月15日~9月20日には、アーレンスブルク在住の中島眞樹さんの絵画展が開かれました。
彼の本職は画家ではなく、胸部外科の医師。引退されるまではドイツの病院の第一線で働き、7000以上にも及ぶ手術を手掛けてきたというのですから驚きです。絵画のほうは、10歳のころに親戚の画家から手ほどきを受け始め、医学生のころにはすでに個展やグループ展を開いていたそう。天は二物を与えるのですね。医師として多忙を極めていた期間にも絵を描き続け、病院を退職した現在も絵画への情熱は続いています。今回の個展のタイトルは「Fantasie 4」とのことで、同センターでの個展も4回目となります。
福島をテーマにした中島さんの作品
中島さんの作品は、抽象的で幾何学的なモチーフが多く、とてもカラフルです。彼にとって絵画は、「自分の内面を表に出すために必要な存在」とのこと。その鮮やかな色彩や、曲線や円形の多いモチーフには、柔軟でありながら均整の取れたポジティブな彼の内面が現れているのでしょう。「履歴書」というタイトルで、ご自身の歩んできた道を紹介する数枚のスケッチもありましたが、とてもユーモアに富んだものでした。ところが、ほかの作品とは明らかに作風の違う作品群がありました。それらは福島の原発事故をモチーフに描かれたもので、なかでも「福島発電所炉心溶解」というタイトルの作品は、一面が黒と暗い赤で塗りつぶされ、暗澹(あんたん)たる状況と思いが表現されていました。
センターの壁に展示されているカラフルな作品
中島さんの絵画作品もさることながら、会場となったペーター・ランツァウ・ハウス自体も興味深かったので、少しレポートを。建物の中に入ると中央に吹き抜けがあり、大きな窓から光がたくさん入るつくりになっています。明るい大小の部屋では、地域住民のためにダンスやヨガ、料理など、さまざまなカルチャー教室が提供されています。プログラムの内容を見てみると、高齢者向けが多いように感じました。「市民相談」の窓口もあり、市役所の市民課のような役割も果たしています。また、住民の憩いの場となるように、バーベキューや映画会も開催されているようです。140名入る大会議室や大小さまざまな部屋は、各種セミナーや個人のパーティーのためにも借りることができるそう。このような場所が近くにあると、より暮らしが豊かになりますね。
建物中央の吹き抜け。天窓から光が差し込む
ハンブルグ日本語福音キリスト教会牧師。イエス・キリスト命。ほかに好きなものはオペラ、ダンス、少女漫画。ギャップが激しいかしら?
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