誰が名付けたのか、リューベックからハノーファーに至る道を、ガイドブックなどでは「エリカ街道」と呼んでいます。エリカの花は、英語では「ヒース(荒野の意味)」と呼ばれていて、湿気を嫌い、水はけの良い荒れた地の方がよく育つのだとか。欧州原産で、高温多湿の日本では逆にうまく育たないそうです。
北ドイツには、このエリカが一面に生えている荒野「ハイデ」があり、8月末~9月初めに花盛りを迎えます。花屋で売っている鉢植えでは、白や黄色のエリカも見かけますが、ハイデに自生しているエリカはピンクや赤紫で、壺状の小さな花が密集して咲きます。特に、リューネブルクの南に広がる「リューネブルガー・ハイデ」が有名で、この一帯は早くから自然保護区に指定されていたそう。今も自家用車で入ることは禁止されていて、ハイデに行くには、ある地点から馬車かシャトルバスを利用することになります。
延々と続くエリカのじゅうたん。写真だと感動を伝えきれないのが残念です
先日知人から、ハンブルク市内にも「フィッシュベッカー・ハイデ」というエリカの原野があることを聞き、早速出かけてみることにしました。エルベ川南岸のノイグラーベンという地域で、こちらも自然保護区になっていますが、すぐ近くまで車で行くことができます(公共交通機関なら250番のバスを利用)。
林道を少し歩いて行くと、木々が途切れて視野が開け、見渡す限りの赤紫のじゅうたんが広がりました。773ヘクタールの広さがあるそうで、所々に灌木が立っているほかは、この赤紫の景色が延々と続いています。地面はほとんど砂地で、確かに水はけが良さそうです。
自然保護区の入り口
私が出かけたのは平日だったので、ほとんど人がいませんでした。あまり観光地化されておらず、ただただエリカの原野が広がるフィッシュベッカー・ハイデは、慌ただしい日常生活で疲れた心を癒すのに絶好の場所。広々とした空間に心が解き放たれていき、リフレッシュできること請け合いです。お天気の良い日なら、青い空に赤紫が映えて、さぞかし素晴らしい景色だろうと思いました。また、この自然保護区内には自然史博物館もあり、ハイデの自然と文化にまつわる歴史を学ぶことができます。
途中、自生しているブルーベリーの木をたくさん見かけました。残念ながらブルーベリーの時期は終わっていましたが、もしブルーベリーの実を摘みながら散歩できたら、なんてすてきでしょう。また、この地では「ハイデシュヌッケ」と呼ばれる羊の群れが放牧されているそう。こちらも今回は出会えなかったので、次回に期待します。ハンブルクは都会ですが、少し郊外に行けばこのような美しい場所に出会えるのがうれしいです。
ハンブルグ日本語福音キリスト教会牧師。イエス・キリスト命。ほかに好きなものはオペラ、ダンス、少女漫画。ギャップが激しいかしら?
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