古くからハンザ都市同盟の港町として栄えたハンブルクには、外国の船乗りたちが頻繁に立ち寄っていました。その船乗りたちがこの地で日曜日を過ごす際、礼拝できるようにと、19世紀後半から北欧の船員教会(Skandinavische Seemannskirche)が次々に建てられました。当初、各国の教会はそれぞれ別の場所にあったのですが、第2次世界大戦後、デンマーク、ノルウェー、フィンランドの教会が、1907年に建てられていたスウェーデン教会と同じ通り(Ditmer-Koel-Str.)に引っ越して来ました。港から聖ミヒャエリス教会へと続くこの通りには教会が隣接し、しかも北欧の旗が並んで掲げられていて、独特な雰囲気を醸し出しています。中でもスウェーデン教会とフィンランド教会は、ハンブルクの記念建造物に指定されています。
その北欧の4つの教会が合同で、毎年アドヴェント(待降節)に先駆けてバザーを行っています。聞いたところによると、バザーの歴史はすでに100年を超えているのだとか。私は今年初めて出掛けてみましたが、ハンブルク市民に愛されているイベントのようで、教会の中は身動きも取れないほどの人、人、人……。それぞれの国の特産物や食品、手工芸品などが所狭しと並び、民族衣装を着た人たちが販売していました。
民族衣装姿で商品を販売する教会員
ゆっくりと見て回ろうと思ったら、かなりの覚悟が必要だと思います。販売係の方にこれらの品をどうやって入手したのか尋ねたところ、教会員が里帰りする際に、大量に買い込んで持ち帰ったとのこと。「だから正真正銘のスウェーデン製なのよ」と仰っていました。
手工芸品の中には、教会員の手作りの品もありました。日本人の中には、ドイツに来たことをきっかけに、特徴的な模様で知られるハーダンガー刺繍を習得して帰国される方がいるそうですが、これがノルウェー生まれの技術だということを今回初めて知りました。そしてその名は、同国南西部のハーダンガー・フィヨルドを模したことに由来するそうです。
こちらがノルウェー生まれのハーダンガー刺繍
手作りケーキを提供するカフェや福引きもあり、これらすべての準備と運営は船員教会の方々がボランティアで行っています。皆さんが奉仕される姿はとても楽しそうで、高校や大学の学園祭に、仲間と一致団結して臨んだ当時の記憶がよみがえってきました。
「このバザーの売り上げは、教会のために使われるのですか?」という私の質問に、「もちろん。そのためのバザーですから」とにっこり。喜んで仕える姿に、神様はきっと大きな祝福のご褒美をくださるだろうと思いました。
ハンブルグ日本語福音キリスト教会牧師。イエス・キリスト命。ほかに好きなものはオペラ、ダンス、少女漫画。ギャップが激しいかしら?