登記社団「みんなの食卓 (Tafel e.V.)」は、「与えられる物を、それぞれが与えること (Jeder gibt, was er kann)」をモットーに、生活保護受給者に食品を配布している団体です。ドイツ国内のさまざまな都市にあり、1993年に最初の拠点が立ち上げられてから、現在その数は900を超えます。
ライプツィヒの拠点は1996年に設立されました。大手スーパーマーケットや小売店などが、賞味期限切れ間近の食品を寄付し、7カ所ある拠点で希望者に配っています。運営は企業や個人からの寄付金で行われ、多くのボランティア・スタッフが関わっています。
ライプツィヒ東部の配布所
各拠点に毎日届く食料品は、野菜や果物などがバランス良く振り分けられて、一箱2ユーロで配布されます。量は成人男性が1日に必要な食品が基本とされ、子供がいる家庭には、牛乳やバターなどの乳製品も加えられます。配布所は、市内でも低所得者層の多い地域にあり、開始時間前から行列ができ、多いところで1日200人以上の人たちが訪れるそうです。食品の受給には、生活保護を受けている証明書や身分証明書の提示が必要になります。また、食品配布だけでなく、クリスマスやハロウィーンなど、家族を対象とした季節ごとのイベントも行っています。
「みんなの農園」に使われているクラインガルテンの休閑地
さらに、2007年からは、青少年保護や教育などについての活動を行う団体「WABE e.V.」と協同して、クラインガルテン(市民農園)の休閑地などを利用した、「みんなの農園」プロジェクトも展開されています。その数は毎年増え続けており、ライプツィヒ市内だけでも40カ所以上にのぼります。ここでは失業中や休職中の人々が、ジョブセンターを通じて時給1ユーロで農作業を行います。そして、収穫出来た新鮮な野菜は、それぞれの拠点に届けられ配布される仕組みになっています。
以前ご紹介した「食のプロジェクト 子ども食堂 (Kinder-Erlebnis-Restaurant)(弊誌第958号、2013年7月19日発行)」も、この「みんなの食卓」の活動から発展しました。食事をすることは私たちの暮らしの基礎となる行為です。過剰生産で毎日大量の食料品が廃棄されているサイクルを転換させて、日々の食生活に困っている人たちに手を差しのべる、それが「みんなの食卓」の活動なのです。あらゆる物が余っている現代の私たちの生活では、まず「減らす」こと、さらに、捨ててしまうのであれば必要なところへ「与える」ことも大切な課題ではないでしょうか。
www.leipziger-tafel.dewww.leipziger-kinderrestaurant.de
ドイツ建築家協会認定建築家。福岡県出身。東京理科大学建築学科修士課程修了後、2003年に渡欧。欧州各地の設計事務所に所属し、10年から「ミンクス・アーキテクツ」主宰。11年より日独文化交流拠点ライプツィヒ「日本の家」の共同代表。
www.djh-leipzig.de