中古の扉や窓を組み合わせて作った2段ベットや、ワゴン車をベットに改造した部屋……。素敵なアイデアがいっぱい詰まった、手作りホステルがライプツィヒ西部にあります。2015年4月にオープンしたこのホステルは、なんと大学を卒業したばかりの4人の女性たちが始めました。ホステルが入っている建物は、ハウスハルテン(HausHalten e.V.)という所有者と利用者を仲介する団体が、オフィスとして使われていた物件を7年間の期間限定で安く貸し出したもの。そこに手を挙げた彼女たち4人が、当時は全くの経営の素人ながら手探りで起業したのです。
「水道と暖房の工事以外は何でもやるわよ。電気の配線も最初はちっとも出来なかったけど、友人の電気屋さんにアドバイスをもらって、それからは自分たちで十分出来るようになったの。後は、Youtubeで工事のやり方をあれこれ見て参考にしてるわ」と、屈託のない笑顔でメンバーの一人のガブリエラさんは言います。素人だった「ビジネス」についても、彼女たちは手探りながら柔軟に対応しています。「観光業について誰も勉強したわけじゃないから、広報や金額の設定が弱いのよね」と、自分たちが抱える問題点についても積極的に取り組んでいます。
大学を卒業後、すぐに起業した女性4人
コンセプトの異なる9部屋はクラウドファンディングで資金を集め、アーティストや建築家たちにデザインしてもらいました。ライプツィヒ中央駅から路面電車で約20分も離れた住宅地に位置し、ホステルとしては不利な立地であるため、オープン当初は利用者数が伸び悩みました。しかし、個性的な部屋と何より彼女たちの魅力もあり、リピーターが増えているそうです。昨年末にはさらに拡張工事を始めました。ただ、立ち上げメンバー4人のうち2人が育児休暇中なので、残りの2人だけで日々の業務をこなしながらの工事は、とんでもなくゆっくりとしか進まないのだとか。それでもいつも楽しそうに笑顔で迎えてくれる彼女たちのホステル「エデンの園」は、ライプツィヒの新しい宿泊スポットとして人気を集めています。
ワゴン車をベットに改造した個性的な部屋
ホステルが入居している建物には、ヴィーガンのケータリング会社とシェアオフィスが同居しています。どちらも同じく若い人たちが起業して始めたビジネスで、自分たちで改修工事を行なう代わりに、格安の賃料で入居しています。近年、人口が増え続けているライプツィヒですが、就業率は他の都市に比べて高くありません。仕事がなければ自分で何か始めようという人たちにとって、安い賃料で自由に使える空間は大きな意味を持ちます。特に初期投資の圧力が小さければ、試行錯誤する時間を作ることができ、モチベーションを維持できる可能性も高くなります。彼女たちの今後の(ゆっくり楽しそうな)展開が楽しみです。
エデンの園:www.eden-leipzig.de
ドイツ建築家協会認定建築家。福岡県出身。東京理科大学建築学科修士課程修了後、2003年に渡欧。欧州各地の設計事務所に所属し、10年から「ミンクス・アーキテクツ」主宰。11年より日独文化交流拠点ライプツィヒ「日本の家」の共同代表。
www.djh-leipzig.de