重度の障害や病気を抱え、現代の医学でも治療が不可能と診断された子どもたちとその家族は、生きていられる限られた時間を果たしてどのように過ごせるのでしょうか?
ライプツィヒ南部のコスプーデナー湖のほとりに診療滞在施設「ベーレンヘルツ(Bärenherz /こぐまさんのハート)」はあります。ここは、重病を患う子どもたちとその家族が最期の時までを過ごすところです。
数日から数カ月に渡って子どもたちは家族と一緒に寝泊まりし、看護師と保育士が24時間・3交代制で守ります。施設は豊かな緑のある公園に面し、湖のすぐ近くに位置します。病気といっても常にベットに寝ていなければならないわけではないので、体が不自由な子どもたちを車椅子に乗せて散歩している家族が多く見受けられます。
2002年にヴィースバーデンでベーレンヘルツ(Bärenherz)財団が診療滞在施設を立ち上げたことがそもそもの成り立ちで、同年末にライプツィヒでも始まりました。必要経費の半額を財団が負担し、ライプツィヒで立ち上げた登記団体が個人から企業までさまざまなところから寄付を集めて残りの半額を負担しています。ここでは0歳から18歳までの子どもたち12人までを受け入れることが可能で、家族が滞在できる部屋は5つあります。さらに今年は建物の増築工事が進行中です。手狭になってきた食堂を拡張し、総勢50名に増えた職員のオフィスや打ち合わせ室も増える予定です。特に体の不自由な重度の障害のある子どもの世話は、親だけが抱えこんで辛い思いを続けるのではなく、助けてくれる人たちの手があることは大きな救いではないでしょうか。しかも経済的な負担をせずに。介護する側の体力的な負担も、子どもが大きくなるにつれて増えていきます。また閉じこもっている状態では沈みがちになる精神のバランスも、同じような境遇のほかの家庭と気持ちを分かち合うことでポジティブな意思を維持する支えになるはずです。
増改築が進められている本館と中庭
私は建築家としてこの増改築工事に関わっていて、設計の仕事を通じてこのような施設があることを知りました。働いている職員の方々も素晴らしい人たちです。現代の医学では完治する可能性が低い病を抱えた子どもたちの命を最期まで看取る場所として、またその家族を支えるためのよりどころとして非常に大切な施設だと思います。
子どもたちも職員も一緒に仮装して楽しむカーニバル
診療滞在施設「ベーレンヘルツ(Bärenherz /こぐまさんのハート)」:
www.baerenherz-leipzig.de
www.facebook.com/KinderhospizBaerenherzLeipzig
ドイツ建築家協会認定建築家。福岡県出身。東京理科大学建築学科修士課程修了後、2003年に渡欧。欧州各地の設計事務所に所属し、10年から「ミンクス・アーキテクツ」主宰。11年より日独文化交流拠点ライプツィヒ「日本の家」の共同代表。
www.djh-leipzig.de